お待たせしました! みんな大好き“天国系酒場”のお時間です
酒仲間であるチミドロのスズキナオさんが、最近山で飲むビールにはまっているらしく、高尾山なんかに登って山頂にある茶屋で一杯やるのが最高だという話を聞かせてくれました。
さすが酒の申し子! なんなんだその最高に楽しそうな遊びは! と思った僕は、まずは身近で気軽に登れそうな山を探してみることに。
すると、よく使っている西武線沿線、飯能市の「天覧山」がそんなにハードな山ではないのを見つけ、山頂に茶屋はあるかな〜なんて、登山が趣味の方のブログをあれこれ眺めていたんです。
結果天覧山には、以前はあったものの現在は茶屋はなく、残念に思っていたのですが、そんなブログの中のひとつに気になる情報を発見しました。
飯能での山登りを楽しまれたとある方の記事に「帰り道、駅に向かう途中、川沿いのお店で休憩しました」なんてサラッと1枚の写真が貼ってあったのですが、それが目を疑うほど素晴らしい光景なんです!
お座敷のような広間の真横を川が流れ、かといって敷居は高くなさそうで、たぬきや系の香りがプンプン漂ってきます。
山登りのことなどすっかり忘れた僕は必死でネット上を検索し、あまり多くない情報の中からお店の特定に成功。
きっかけをくれたナオさんと、妻を誘って、季節が夏から秋へと移り変わりつつあるとある休日に、飯能へとでかけてみることにしました。
埼玉県にある「飯能駅」は、西武池袋線の「池袋駅」から急行で50分弱と気軽に行けるんですが、徒歩数分の場所に美しい入間川が流れ、川遊びやバーベキュー、キャンプなども楽しめる行楽地で、僕は昔からよく遊びに来ていた街でもあります。
駅に着き、まずは定番のショッピングモール

サビア
で、お店に着く前に川辺でちょっと飲みたいビールなんかを買い出し。
あれ? ここ、近々閉館してしまうんですね。
寂しいけど、その前に来れてよかった。
ちなみに我々の入店は10時の開店と同時だったんですが、入るとすでに大量の老人たちが店内を徘徊しており、どこか現世ではないような謎の雰囲気が印象に残りました。
買い出しがすむと、こんどはシーンと静まり返り人の気配を感じない薄曇りの住宅街を黙々と川方面へ。

15分ほど歩くと前方に見えてきたのが

割岩橋(われいわはし)
赤いアーチが美しい。
ここを渡りたいところですがグッとこらえて、

手前の横道
に入り、急な階段を下りてゆくと、

一気に大自然!
水、きれいすぎません?
もうテンション急上昇ですわ。
川沿いは舗装された道になっていて、そこを進むと、

広々としたウッドデッキエリア
ここまでで「これ、晴れてたら最高でしょうね」と何度口にしたことか。
で、さらにズンズン進んでいきまして、ちょっと河原を上がったところに、

あきらかにヤバいエリアが!
バーベキュー客向けの用具貸出、兼休憩施設が2軒並び、夏の間は大にぎわいなんでしょうが、今はシーズン外の観光地の侘しさが漂っていてたまらない雰囲気です。
そのうちの1軒が本日の目的地、
かっこいい〜! 味わいある〜!
念のため前日に電話で確認しておいたので、営業しているのは間違いありません。
期待に胸を高鳴らせつつ、いよいよ店内へおじゃましましょう。
こんにちは〜……

!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
ヤバい! 予想以上に最高すぎる!
シンプルな長方形の座敷の右側が全て窓になっており、その下、間違いなく川ですよこれ。
なんだろう、もう最近の自分、どんなに安くてうまい名店よりも、こういう圧倒的なシチュエーションこそが至高と思ってしまってる節がありまして、ここ橋本屋さんはそれが奇跡のように完璧です。
どこを見ても、

味!

味!!

味!!!

味!!!!
もしこのあと頼む全ての料理に何ひとつ味付けがされていなくても全く物足りなさを感じないであろう、味わいの極地。
優しそうな女将さんに「写真を撮ってもいいですか?」とうかがったところ、「いいけど、今バーベキューのシーズンが終わったところで一番汚いのよ〜、ごめんね」なんておっしゃられてましたが、いえいえ、全然そんなことないですし、最高としか言い様がない店内ですよ。

「今座布団出しますからね〜」
メニューは、そば、うどん、ラーメンの類から、カレーライスや焼肉定食、コロッケ定食などの定食もの、ミツ豆、アンミツ、おしる粉といった甘味もあります。
飲み物は、ビールの大ビンが700円、ウーロンハイが400円、日本酒300円、他、ジュースやラムネ、紅茶にコーヒーなど、老若男女完全対応の構成ですね。
全体的に手頃な値段ですが、さらに嬉しいのが、先ほど外観写真に写っていた缶飲料各種も頼んで良いという点。
缶ビールは300円、発泡酒や缶チューハイは250円ですよ!
そして我々のような飲み使いの客に嬉しいのが、

黒板のつまみメニュー
酒が進んでしょうがなさそうな一品料理がずらっと並んでいます。
ひとしきり店内の味わいを楽しんだら奥のテーブルに陣取り、いきなりケチって缶ビールもなんだろうということで、

ビールの大ビンを
注いでテーブルに置いただけで、

笑えてくる良い眺め
ふと横を見れば、

この景色!
水が透明で、深いところの緑も美しいですね〜。
晴れてたらさらにきれいだったんだろうな……。
おっと、また同じこと言ってしまいました。

お隣の名栗川亭(川のこちら側と対岸の両方に建物がある)
もまた、絶対良いんでしょうね。
ところで、きれいにお化粧をされた上品な女将さん、とってもフレンドリーでお話し好きです。
奥の厨房で調理を担当するご主人は昔気質で「前に「埼玉ウォーカー」の取材が来た時も、アポを取って来てくれたのに断るって言い出して大変だったのよ!」とか「もう営業は40年になるけど、こういう形態でやってるのはうちとお隣だけね」とか「営業時間はだいたい10時から日暮れまで」とか、興味深い話をたくさん聞かせてくれます。
さらに「窓の下見てみて」とのことで、そちらに目をやると、

立派なアオサギが1羽
何度かエサをあげているうちにこの場所が定位置になったそうで、女将さんは「しーちゃん」と呼んで可愛がっています。
「エサは何をあげてるんですか?」と聞くと「豚肉!」と意外な答が返って来たのには笑いましたが。

しーちゃんは自由
ナオさんと「きっと俺たちのことを見下してるんでしょうね」「人間が一番つまらない存在ですね」なんて言いながら、しーちゃんの見ている景色に想いを馳せます。

「今晩はここから二階に上る事は出来ません」
女将さんいわく、人数を集めて宴会予約をすれば2階が使えるそうなので、それ、こんど絶対やりに来ますから!

味噌おでん(400円)
濃いめの味噌で酒が進みすぎる〜。

三ツ葉のおひたし(400円)
なんだろう、年齢を重ねるごとに三つ葉が好きになっていくんですよね。
三つ葉に対する感情は、もはや“愛”の領域に突入しています。
これらをチビチビやりながらビールを飲んでたら、当然なくなりますわな。
では次は、

こっちの

缶チューハイ(250円)
を頂きます。
「コップは変えなくて大丈夫ですよ」と言ったら、「私は飲まないからわからないんだけど、味が混ざらない? 大丈夫?」ときめ細やかな心配をしてくださる女将さん。
あまりにもこの空間が良くて、しばらく黙って立ちのぼる泡を見つめたあと「泡、きれいすね」「泡ってこんなきれいだったんですね」てな会話をナオさんとボーッとしていたような記憶がありますが、今思うと完全に老人の域ですね。
さて! ではそろそろアレをいっちゃいましょう!

正油ラーメン(600円)
こういうところのこういうラーメンを味わわないことにはね!
見てくださいこの、

神々しい景色
僕には何かの祭壇のようにすら見えます。
今まさにラーメンをすすらんとするナオさんも、

見たこともないような優しい表情
悟り人のようですね。

チャーシューがまた
ギュッとした肉質でよく醤油味が染み込んでいて、うまいです。
もちろんラーメン自体も、現代の主流である多層的な旨味が荒れ狂うド派手な方向とは正反対の“引き算のラーメン”とでもいうべき味わい深い一杯。
派手な味に慣れてしまった我々からすると何か一味足りないような気もするんだけど、ついもう一口、もう一口とスープを口に運んでしまいます。
これぞ毎日でも食べられるラーメンっていうんでしょうかね。
現に今現在もすごく体が欲してますし。
一通り飲み食いし、

横になるナオさん
これ、行儀が悪いように見えますが、決してそういうことではありませんので!
というのも、女将さんが「いつもひとりで来て、食事がすんだらここで少し昼寝してから帰っていく男性のお客さんがいるのよ」というお話をしてくれまして「そんなことも許されるお店なんですか!?」と驚くと「いいのよいいのよ」という流れがあったんですね。
で、「じゃあ試しに」と。
もちろん僕も少しの間ゴロンとさせてもらいましたが、ほろ酔いで川のせせらぎを聞きながら畳で横になる体験、天国以外の何ものでもなかったっす!
いや〜、またとんでもない店があったもんだな、橋本屋。
さらにすごいのが、なんと季節を問わず営業されており「雪の日なんかきれいよ〜」とのことで、うお〜、来たい! また季節ごとに通いたいお店が増えてしまった!
本当に良い時間でした。
ごちそうさまでした!

帰りに女将さんと記念写真を
「この写真、インターネットに載せても大丈夫ですか?」とうかがったら「きれいに写ってるの選んでね」とのお返事でしたが、どの写真も大変おきれいでございました。
はい、というわけで、またしても出会ってしまった素晴らしすぎるお店「橋本屋」さんをご紹介する本編はここでおしまいなんですが、そのあとのコースも楽しかったので、ここからはおまけ。
もうちょっとだけ続くんじゃ。
長くなってしまってすいません。
橋本屋を出た我々は、

粋な釣り人
の横を通り抜け、

木製の橋
で対岸へと渡り、これまた事前にチェックしていた、
というお蕎麦屋さんへ。
橋本屋からは5分と離れておらず、こちらも

窓のすぐ下を川が流れる最高の立地
初々しいカップルがデートで行くとしたら、橋本屋よりこっちですかね?
ここで、

そば味噌とそば焼酎のそば湯割
に、

せいろそば
など、そば三昧を楽しんだわけですが、ここもまた最高!
普段立ち食いそばばかり食べている僕は「うわ〜本物のおそばってこんなに美味しいんだ!」「通のマネでツユにつけないで食べてみたら本当にそば粉の味がする!」と大興奮。
そばなのでそこまで高級ってわけではないですが、すごく贅沢な過ごすことができました。
さらに、河原に出て数十分ほど石で水切り遊びをしていたところ、興味が“石自体”に以降。
「この石、焼肉のハラミに似てません?」「あれ、こっちの石も肉だ!」と、謎の盛り上がりがあり、

おあつらえむきに落ちていた串の上に、肉石を並べ出すナオさん
「濡らすと完全に肉ですよこれ!」「もつだ! 宇ち多゛のもつ焼きだ!」と、東京屈指の名店に対して失礼極まりない発言まで飛び出す始末。
全部持って帰りたい欲望を抑え、僕は“ハラミ石”だけを持ち帰ることにしたんですが、妻から「本当に持って帰るの? それ」と、何度も確認されたことは言うまでもありません。

絵力は本物

今さら顔を出す嘘のような晴れ間
さて、十分に遊んだ我々は駅方面へ。
「もう一杯だけ飲みたいっすね」ということで、飯能で遊んだ帰りによく利用する、駅近の中華屋「祥龍房 飯能駅南口店」さんにおじゃまし、

「マポ豆腐」にしようかな〜?

いやいや「マアポウ豆腐」も「マポナス炒め」も捨てがたい

でもやっぱり「マアポウ春」でしょ!
などとひとしきり悩んだのち、空芯菜やタコの唐揚げなどをつまみに飲んで、

絶品の刀削麺
で締めて、この日はお開きとなりましたとさ。
つーか、麺食いすぎ。
気になるハラミ石に関してですが、僕はその日の夜、自由が丘で行われるトークイベントにゲスト参加することになっておりまして、そこで一緒になったディスク百合おんさんが、偶然にもその日が誕生日だということで、とっさに「これ、一生懸命探してきた石だよ! はいプレゼント!」とお渡しして

無事役目をまっとうしてくれました
……なんなんだこのまとめは!
最後は石の話になってしまいましたが、とにかく飯能はとっても素敵なところで、橋本屋はこれからずっと通い続けたい最高のお店でした。
おしまい
ぐるなび - 橋本屋(飯能・日高/食堂・定食)
住所:埼玉県飯能市飯能271
電話:042-972-5021
アクセス:西武池袋線飯能駅
櫟庵 (くぬぎあん) - 飯能/そば [食べログ]
住所:埼玉県飯能市大河原70-1
電話:042-973-2576
アクセス:西武池袋線飯能駅
祥龍房 飯能駅南口店 (ショウリュウボウ) - 飯能/中華料理 [食べログ]
住所:埼玉県飯能市南町6-11
電話:042-972-8815
アクセス:西武池袋線飯能駅
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