大衆酒場ベスト1000

2011年08月03日

第40回「味珍(横浜)/豚の胃」

初の横浜!でも横浜らしからぬ渋いお店です

早いもので「大衆酒場ベスト1000」も今回で40回目。
こんな、ごく私的で偏見に満ち、かついいかげんな内容の連載にも関わらず「いつも読んでますよ!」なんて言って頂く機会も少しずつ増え、全くありがたいことでございます。

さらにありがたいことに最近は「どこどこにこんなおもしろい店がありますよ」なんて情報まで頂いてしまう事すらあって本当にもう!
未知なる大衆酒場に出会う事が何よりの趣味である自分にとって、そういったお言葉こそ金言!至宝!何にも代えがたい財産となるものです。
本当にありがとうございます!

というわけで今回は、最近頂いたそんなタレコミを元に実際潜入して来たお店をご紹介します!


さて、先日仕事の関係で、神奈川県の“逗子”に行く機会がありました。

逗子へは僕がよく利用する池袋駅からなんと“湘南新宿ライン”で1本!
乗り換えなしで乗車時間は1時間とちょっと、片道の運賃は1,050円と、その観光地然としたイメージとは裏腹に、意外にも気軽に行ける街なんでよね。
実感は関東方面在住の方じゃないと沸かないかもしれませんが、横浜、鎌倉を通り抜けて逗子に至る湘南新宿ライン、このラインが出来てから随分とそちら方面に出向くのが気軽になりました。
個人的にも、本当に最高のラインだと思っています!

でまぁ、それはいいとして、逗子での仕事から解放されたのが夜の8時30分頃。
割と丸1日仕事だったので疲れ果て、軽〜くおいしいもんでも食べて、さらにおいしいお酒の1、2杯も頂いて、湘南新宿ラインでサーっと帰ってシャワーでも浴びてパタンと寝ちゃいたいなと、そういう計画を瞬時に立てました。

で、「さて何食おう」と考えた時に「あれ、そういえばこないだ教えてもらったあそこの店、すっげー行きたかったんだよな、確か場所が横浜だったような…」と、思い出したお店こそ今回ご紹介する「味珍(まいちん)」さんです。

僕は便利なアイホンを取り出し、即座に思い当たるキーワードで検索を開始。
すると、横浜駅の西口徒歩2分の場所に、確かに味珍はありました!
横浜なら逗子から20〜30分。
湘南新宿ラインの停車駅でもあるし、ちょっと途中下車して寄るのもそんなに大変じゃない。
「よし、思い立ったら迷ってる暇なんてねぇ〜!」ってなノリで向かいましたよ、横浜。

移動中に調べた情報によると味珍は、横浜駅西口の繁華街に一角だけ残る渋い横丁「狸小路」の中に存在するらしい。
いい名前じゃないですか、狸小路。
こりゃ期待出来るぞと向かった先にあったのは、想像以上に素敵な横丁の入り口!




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渋すぎる!





ビルに囲まれた一角に突如として出現する昭和感丸出しの横丁、もう大好物です!
「よろしく」って事なんで躊躇せずお邪魔しましょう。

すると…




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あった!





情報を頂いて以来どうしても来てみたかった味珍が、今目の前に存在しています!
こういう瞬間は本当テンション上がるなぁ。

おっとこの辺で、味珍がどんなお店かってのをご説明しておきましょう。
まず看板に“豚の味珍”とある通り、メイン食材は“豚”です。

味珍、逆から読むと珍味。
そう、豚は豚でもちょっと珍しい部位を出してくれるお店でもあるんですね。
これも看板に書いてある通りなんですが、

頭→カシラ肉のこと
舌→タン
耳→ミミ
肚→訓読みで“はら”胃袋のこと
脚→豚足
尾→しっぽの肉

これらの部位を(たぶん)同じ醤油味でシンプルに煮込んだ6種類のお肉が名物でありメイン料理となっています。
だからお店に行ったら、食べたい部位を注文するというのが基本になるんですね。

それでは入店してみましょう。
1階のドアをガラッと開けて「1名なんですが…」と告げると「どうぞこちらへ」と、そこから半歩くらいしかないカウンター席の一番端っこに通してもらえました。

2階もあるようなんですがそちらの様子はわからず。
1階は面積的にはかなり狭く、10人が限界って感じの“コ”ではなく“く”の字のカウンターの中に大将が1人。
かなりの老舗と思われるのですが大将は物腰柔らかかつ親切で、威圧感などは全く感じず居心地がいいですね。

何はともあれお酒を頂きましょう。
まずは焼酎とお茶を注文。

するとこんな感じで到着です。




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焼酎(380円)お茶(150円)





焼酎はグラスに並々と注がれ受け皿に溢れています。
よく思うんですが、こういった焼酎を調合用のコップにこぼさず移せるようになったらなかなかの上級者ですよね。
コツは思い切りだと心得ていますのでサッと、不恰好ながらもなんとか数滴のこぼれにとどめてコップに移し、適宜お茶で割って頂きます。

ところで常連さんは焼酎の事を“やかん”と呼ぶらしいのですが、カウンター上にあるやかんからツーッとグラスに注いでくれるのが理由のようです。
大将はたまにこのやかんに焼酎を補充しています。

このやかんが非常に変わっていて美しい形をしてるんですが、すいません、初めて入った、あまりにも狭い店、しかも常連さんが数人のみという状況も相まって、あまり店内の写真などを撮りまくれませんでした…。
気になる方は食べログなんかで探せばすぐに見つかるので、見てみて下さい!

あ、飲み物と同時にすぐつまめそうな“腐乳”も頼んでおいたんだった。




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腐乳(150円)





沖縄の豆腐ように似た(正確には豆腐ようの起源が腐乳)中国の発酵豆腐で、箸の先でチビチビと取って口に運ぶと濃厚な風味が広がって酒のつまみに最高です!
お酒っぽさ、それから何故か花のような香りも感じ、臭みがそれほど強い物でもなく、本当にうまいですね。
質量あたりの酒が進む度合いで言ったら間違いなく全食物の中でもトップクラスでしょう!

ところで先ほど豚がメインのお店と言いましたが、このようにいくつかの豚以外のメニューもあります。
くらげサラダ(400円)白菜の漬物、辣白菜(300円)皮蛋(300円)等々。
どれもおいしそうですけど、今回は食べられる量も時間も限られているのでグッと我慢。

さて、そろそろメインの豚料理を決めたいところですね。

僕は豚肉が本当に大好きで、特にやきとんに行けば必ず頼むってくらい“かしら”が好きなんですが、せっかく味珍に来たのであえて珍しい所を攻めてみようと思います!

というわけで“胃”と“尾”をチョイス。
図らずもイオになってしまって釈然としない気持ちを焼酎で流し込み、到着を待っていると…




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尾(700円)





うあー!プルップル!

これを他のお客さんの作法にのっとり、小皿にからし、そして酢を入れてガーッとかき混ぜ、味珍の基本ベースとなるタレを自分で調合し、そこに浸して食べます。

ゼラチン質全開で、豚足にかなり近い味と食感。
口に入れるとネットリとした脂の甘みが広がり、シンプルな醤油味が素材の味を引き立てています。

実は僕、からしがそんなに得意ではないんですが、酢でまろやかになった上にこの脂と一緒に食べることによって、まったく辛さは感じず、こりゃー確かにうまい!

正直、1皿700円とそこまで激安ではないけど、量もたっぷりなんで大納得。
脂乗りまくりで、むしろ1人で食べるのにちょっと難儀しそうなレベルですよ。
数人で来てそれぞれが好きな部位を注文し、みんなで色々つまむってのがここの醍醐味かもしれませんね。

この1皿でまたまた酒が進んでしまったので焼酎のお代わりをお願いします。
今度はお茶割りではなく、カウンター上にあって誰でも自由に使っていいらしい“梅エキス”のビンを手に取って数滴、焼酎に直接たらして飲んでみます。




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ほんのり色付いた焼酎





25度の焼酎をほぼストレートで飲んでるようなもんなのでそんなに甘っちょろい酒ではないんですが、梅エキスの風味でものすごく飲みやすい!
梅というか杏のような甘〜い香りにも感じますね。
うまいなー、そして効く!

そうこうしていると“胃”も到着しましたよ。




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胃(700円)





これが本当に最高でした!
写真を見てもらえるとわかりますが、肉自体が3層ほどの層になってますよね?
いわゆる胃、ガツ刺しを思わせる歯ごたえのある部分に加えて、甘みがあってトロッとした脂の層、柔らかな肉の層などからなっており、そのハーモニーたるや芸術的!

調合したタレに醤油やラー油などもお好みで入れてそこに浸し、そこに最初に頼んだ腐乳をちょっと乗せて食べても、複雑さが何倍にもなって恍惚となりますね…。

素材自体がシンプルな味付けだからこその深みを存分に感じながら、ゆっくりと残りのお酒を飲み干して1時間弱。
本当なら全ての部位を堪能したいくらいなんですがもうお腹いっぱい。
残りは次回の楽しみとして、そろそろ帰りの電車に乗らなければなりません。

お会計を告げて外へ。
横丁から出ようとしないと見えない、看板の裏に描かれたイラストとメッセージも素敵ですね。




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狸と酒





一歩この横丁を出るとそこは横浜の街。
程よい酔いも手伝って「俺はさっきまで、狐じゃなくて狸に化かされていたに違いない」とわけのわからない確信をしながら再度湘南新宿ライナーに乗り込んだ次第です。


おわり。




より大きな地図で パリッコの「大衆酒場ベスト1000」 を表示



豚の味珍(マイチン)


posted by パリッコ at 12:00 | Comment(0) | 第26回〜第50回
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