やかんから立ち上る湯気を眺めながら、熱燗とおでんで一杯
寒くなって来ましたね。
夏の終わりの頃には「うわーもう終わっちゃう!永遠に夏が終わらなければいいのに!」なんて割と本気で思ったりもする僕なんですが、秋〜冬の気配を感じ始めるとそんな気持ちはすっかり忘れ、俄然冬モードの到来にワクワクします。
コタツに鍋とか最高過ぎ!
あとあれ、冬が来る度にあれ思い出すんですよね。
美味しんぼに出て来た、北海道の人の冬の楽しみ方でしたっけ?
暖房を熱いくらいガンガンにかけた部屋で、冷たいビールを飲むってやつ。
想像するだけで喉乾くわー。
最高。
まーというわけで、冬は冬でおいしい食べ物も多いですし、酒好きには相変わらずいい季節です。
そこで今回は、小雪なんかがちらつく夜に、なんだったらコートの襟でも立てちゃって、カラカラっと戸を開けて服に積もった雪を落とし、静かな店内で熱燗を一杯。
そんな渋ーいシチュエーションの似合うこじんまりとした居酒屋さんをご紹介したいと思います。
場所は代々木です。
代々木公園に国立競技場、代々木ゼミナール、そして代々木アニメーション学院と、名前だけはやたらと轟いている代々木ですが、これが駅前となると割と地味な街なんですよね。
歩いて数分もすればお隣新宿ですが、驚くほど何もねーなーって印象です。
居酒屋もそんなに豊富って程ではなく、駅前は笑笑、魚民、土間土間なんかの基本チェーンが幅を利かせている感じ。
なんで代々木でちょっと飲もうなんてなった時には、「ここでいいかぁ」なんつってそういったお店に入っちゃいがちなんですよね。
ところがそんなド駅前に「え!こんなとこに店が!?」って感じでひっそりと佇むお店があります。
それが「東ぎく」さん。
もう本当にJRの改札出て目の前なんですが、完全に気配消してますね、ここは。
店内はテーブル数席、カウンター数席、満員入って2〜30人くらいでしょうか。
女将さん曰く「今年で47年目」という事で、とにかく落ち着く、しっぶい内装です。

店内
お店に入ると大通り沿いとは思えない程静かです。
BGMはTVの音のみ。
大箱のチェーン居酒屋みたいなワイワイガヤガヤした雰囲気が皆無なので、なんつーかもう、心の底からまったり出来ますね。
また女将さんのキャラクターがよく、親切に色々とお店のシステムを教えてくれます。
「ビールはあの冷蔵庫から勝手に出して!飲み終わったらこっちに置いといて、後で数えるから」みたいな感じ。
常連さんの立ち振る舞いを見ながらお店のルールを少しずつ察して行く必要がないのがとてもありがたいです。
女将さんに話しかけると底抜けに明るい笑顔で止めどなく色々な話を聞かせてくれますが、こっちが話しかけないとほっといてくれる、この距離感がまた居心地いいですね。
ちなみにこのお店、料理の値段が一切出てません。

こんな感じで
これは正直ちょっと怖いっすね。
お会計の時にいくらって言わたって何も言えませんから。
そういう時はあらかじめ素直に聞いておくのが吉でしょう。
一見ついつい「ただいま!」と言いたくなるような温かみのある店内で釣っておいて、ただのボッタックリ店だったら困りますしね。
なんつったってここは東京、コンクリートジャングルです。
自分の身は自分で守りましょう。
「すいません、料理の値段って…?」
「だいたい500円」
アバウトな返事が返って来ました。
まぁ、「そんなに高い値段でやってないから安心して。おでんだけは、量があるから500円では出せないけど」と追加情報頂いたので、安心して良さそうですね。

お通し
お通しはいんげんのごま和えでした。
もう、心からほっとする味。
東京に出て来て早10年、しばらく田舎にも帰ってない、そんな人が食べたらたまらず泣き出す味ですね。
それからポテサラ的なもんかなーと思って頼んだポテマヨ。
意外にもじゃがいもにマヨネーズと醤油がかけて焼いてあるという、なんとも友達の家で出て来そうな料理でありますが、この組み合わせが酒に合わないはずはありません!

ポテマヨ
次はチーズきゅー。
見たままです。

チーズきゅー
女将さんが「これがおいしいのよ〜!」と指差しながらおっしゃるので、「チーズか?きゅうりか?それともこの組み合わせが?」と思ってよく指先を見たら、まっすぐにナビスコのクラッカーに向いていたのには和ませて頂きましたが。

とうふサラダ
こちらも見たまま、紛う事無き“とうふサラダ”ですね。
あなたが今、想像している通りの味です。
なんかこの日は場所に似つかわしくないっていうか、家でも食えそうなもんばっかり頼んでますね。
エイヒレだ丸ぼしだっていう、もっと渋いメニュー頼めば良さそうなもんを。
まーそんな時もあります。
ところでそろそろビールから他のお酒に移りたい気分。
カウンターに松竹梅の180ml瓶が並べられ、年期の入ったやかんがひとつ、小さなコンロに乗っています。
聞けばお客さんはここで自由にお酒に燗をつけ、自分好みの温度で飲む事が出来るそうです。
うん、たまんないじゃないっすか。
「1本頂きます!」とやおらお酒を手に取り、ふと気付きました。
「おれあんまり熱燗好きじゃねぇ」
そう、僕、飲み物と言えば基本的に“コールドドリンク”ってイメージを持ってるので、まー飲めばおいしく頂けるんですけど積極的に飲みたい方じゃないんですよね。
ですので、味のあるやかんは眺めるだけにとどめて常温でもらう事にしました。

おでん
さて、おでんです。
先ほど「これだけは500円では出せない」と聞いていただけあって、確かに軽く“鍋”ですね。
ネタも豊富で、濃いめのツユがしっかりとしみ込み、これまた心からほっとする味。
ちなみに僕は、この中だとこんぶとちくわぶが好きです。
全てのお料理が、決して突出して絶品とまではいかないんですが“毎日食べるならこんな味”っていう安心感に満ちあふれおり、雰囲気と合わせて、つい何度でも足を運びたくなるお店ですね。
ちなみにリピーターが多いメニューが実は“もつ煮”だそうで、これはまだ食べてないんで近々再訪する必要がありそうです。
そろそろお会計しましょう。
ビール数本、日本酒、お料理が上のような感じで、ひとり2500円くらいでしたので、全然妥当な値段って印象でした。
帰りにみかんもらったし。
というわけで、特にこれからの季節に似合いそうな東ぎくさん、お近くにお寄りの際は是非訪ねてみてくださいね。
女将さんも喜ぶと思いますよー。
最後は、あまりにもお店の雰囲気がいいので同行の方に撮ってもらった、僕の新しいアー写でお別れでーす!

来年度のアー写はこれで
※あ、ちなみに、いっつもこんなサングラス掛けてるわけじゃないっすからね。
この日は偶然DJ前だったから…。
いや、なんでDJするのにグラサンがいるんだと言われれば返す言葉はないですが…。
東ぎく - 代々木/居酒屋 [食べログ]