大衆酒場ベスト1000

2010年02月20日

第6回「とんぼ亭(大泉学園)/いぶりがっこのクリームチーズ和え」

モチベーションを上げ、最新のガジェットでライフハックせよ!

 ある時期を境によく耳にするようになった、な〜んか認めたくないっていうか、耳障りが悪いっていうか、腑に落ちないってうか、そういう単語ってないですか?僕の場合例えば、“ライフハック”(横文字にするほど大したもんでもない場合多数)とか、“ガジェット”(だからいちいち英語にしなくていいっつーの)とか、“モチベーション”(って言葉を持ち出す時点ですでに、その人のモチベーションは下がり切ってるらしいですよ)等々、数え上げればキリがないんですが(※)。そして僕の中で、居酒屋業界におけるそんなワードの代表格が“創作ダイニング”です。




(※)もちろんただただイヤだって訳じゃなく、専門職の方なんかが適切に使用するのになんら反感は持ちませんよ。ただなんか、ニュアンスのみで使ってるパターンが多いような気がしちゃいましてね。




 創作ダイニング。なんなんでしょうかこの嫌ったらしい響きは!和食、フレンチ、イタリアン、中華、アジアン、etc etc……。それぞれの国で何百年、何千年に渡って洗練されて来た食の伝統文化をポッと出の凡百料理人が“創作”と称し、やれあれとこれを掛け合わせただ、やれ新しい解釈でアレンジだ、やれこれぞ食のエンターテインメントだとこねくり回す。もちろん中には既存の発想に捕われずに奇跡の美味を生み出す真の天才料理人もいるんでしょうが、ほとんどは自己満足の世界。これ則ち食への冒涜也!即刻店をたたむべし!!! …と、思わず語気を荒げてしまいましたが。すいません、別にそこまで激しく憎んでるわけじゃ全然ないんですが、書いてたらなんかその気になって来ちゃいました。とにかく、街に蔓延する“創作ダイニング”の若干の胡散臭さって、分かってもらえる人には分かってもらえると思います。

 ただこの創作ダイニング、実は利点もあって、ズバリ“まだ距離感が微妙な知人と行くのに重宝する”んですよね。想像して下さい。仕事絡みで、電話では何度かやりとりしてるんだけど初めて会う人。平日の18時くらいから打ち合わせかなんか始めて、案外サクッと終わって19時半。場所はありふれた繁華街です。どちらともなく「軽く食事でもどうですか?」なんて流れになった時。まず相手がどんくらい飲む人か分かんない。食の好みも分かんない。だからって「ここどうです?牛丼だけでなく、カレーもあるんですよ」と、松屋なんか指差したらドン引きされる可能性大でしょう。しかしいきなりガッと腕を掴んで小汚い居酒屋に引っ張り込むのもどうか。もちろん「確かこの辺に、うまいフレンチがあるんですよ!」とか言う奴なんかもう、ワケ分かんない。そんな時のチョイスとして適切なのは、創作ダイニングじゃあないですか?どうです?“創作ダイニング”の文字、そして高いんだか安いんだか分かんない微妙な値段設定が、俄然頼もしく見えて来たでしょう。そう、あなたはおもむろに、最新のガジェットであるiphoneを取り出し、画面に“創作ダイニング”と打ち込み、“何かあったらすぐ検索”というライフハックを行使すれば良いのです!近場で待たずに入れる創作ダイニングを確保したらば、その店で初めて一歩踏み込んだ話をし、相手が酒好きなら「次はあそこ行きましょうよ〜!小汚いけど安くてうまい居酒屋があるんですよ!」とか、逆に下戸なら「あっそうなんですか〜。じゃあ今度チャンネーどうすか?パイオツ!」などとやればいいわけです。これにて相手のモチベーションも急上昇。あとはお仕事さえきちんとすれば、今後の関係も良好に保てるでしょうね。

 と、ここまではただの戯れ言でして、まーなんやかやあって先日、創作極まりないダイニングへ行く機会があったんですわ。場所はこういう類の店はあまり似つかわしくない大泉学園。ダラダラお店探ししても疲れちゃうし、普通の店でいいから、とりあえずどっか飲めるとこ入ろうー。なんて状況がありまして、ふと「線路沿いにある、あそこどうだろう?」と思い出されたのが今回ご紹介する「とんぼ亭」さんです。ちょっと名前がお好み焼き屋っぽいですけども、ガラス張りの店内は落ち着いた照明。入り口には各地の焼酎がずらっとディスプレイされており、何しろとっても綺麗な外観。「うん、ここでいいね!」なんつって初めて入ってみたんですが、中々いいお店だったんですよね。

 さてこのとんぼ亭さん、自ら創作ダイニングを謳っているわけではなく、曰く“おばんざい居酒屋”だそうです。しかしおもむろにメニューに目をやると「骨付き豚肉と野菜の黒ビール煮」「豆乳とたらのクリームコロッケ」「お好み焼き風チャーハン」「温野菜のチーズフォンデュもどき」「鮭とジャガ芋の月見グラタン」」etc etc……!クラクラしそうな創作の洪水です。でもこういうメニューって、実際に目の前にするとどれもめちゃくちゃ興味そそらちゃうのがまた創作マジックなんすよね!しかもこちら、半額よりちょっとだけ高めの値段(例えば680円のお料理なら350円くらいとか)で半分の量を出してもらえる“ハーフ注文”が出来る品も多く、色々試してみたいだけにかなり親切だと思いました。ひとまず大好物の「サメ軟骨の梅肉和え(梅水晶ってやつですね)」と、「カキフライ」「柚子こしょう蓮根」の3品をハーフで。加えてお手頃価格650円の「刺し盛り3種」も頼みます。ハーフの品は、どれも半分という割にはボリュームがあって、カキフライなんか450円で大粒の牡蠣が4個。目の細かい衣が薄ーくまぶされた珍しいタイプで、カリっと噛むとジューシーな旨味とプリプリとした食感が弾ける絶品。かなりレベルが高いです!柚子こしょう蓮根は、ぶ厚く切られた蓮根の隙間に里芋とハンペンと柚子こしょうを混ぜたという物を詰めてカラッと揚げられており、しつこさを感じさせない柚子胡椒の風味が味わい深いですね。

 そして今回のタイトルにもなっている一品!とんぼ亭さんのお料理はどれも申し分なくおいしかったんですが、字面的に“創作オブ創作”を感じさせてくれた「いぶりがっこのクリームチーズ和え」ですよ。いぶりがっこは秋田名産の、まーいわば沢庵の薫製。スモークド○○ってやつは無条件で酒に合いますのでもちろん大好きです。ここからが凄いので冷静に聞いて下さい。このメニュー、5mm角くらいに細かく刻んだいぶりがっこをこれまたスモーキーなクリームチーズと和えてディップ状にしてあります。それをリッツに乗せて、さらに上にかかっているのがチリソース!一体誰が食ったことあるんだこの料理を!濃厚なので少量ずつ舐めるように味わってみると、実に酒が進みますね。チーズのまったり感を甘めのチリソースで引き立てた所に、いぶりがっこの塩気と歯応えがアクセントを加えます。口全体に広がるスモーキーさもたまんねぇ!僕はハーフで頼んで300円ちょっとだったと記憶していますが、これで酒5杯は行けますよ。




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いぶりがっこのクリームチーズ和え・ハーフ/350円くらいだったかな?





 と、いうわけで“創作”がきちんとプラスに機能している素晴らしいお店「とんぼ亭」。あんまり何を頼んでもおいしいもんで、この後「ラムのやわらか焼きおろしポン酢」を追加。これがまた、ラムがあんまし得意じゃない僕でも骨抜きにされるほどうまかったんだけど〜、この文書いてたらもう飲みに行きたくてたまんなくなって来ちゃったんで〜、今日はこの辺で!へんぴな駅にあるお店ですが、気になる方は直接行って試してみて下さいね!それでは!




とんぼ亭 | 大泉学園
とんぼ亭 - 大泉学園/居酒屋 [食べログ]


posted by パリッコ at 12:00 | Comment(0) | 第1回〜第25回
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