大衆酒場ベスト1000

2012年03月20日

第56回「ほかり食堂(石神井公園)/カレーライス」

昔ながらの食堂は意外に飲める穴場多し!

こんな連載をしてますと、居酒屋メモみたいなもんが割と必須だったりするんですよね。
行ったお店や日時、ちょっとした状況なんかの防備録というか。

それで以前は文庫サイズのメモ帳を「居酒屋ノート」と名付けて持ち歩いていたんですが、いかんせん僕、メモとか手帳を使うのに向いてないようで。
もちろん居酒屋で何やらノートを取り出してゴソゴソとメモなんか取るのは無粋ですから、自ずと後日ということになるんですけど、思い出した時に書こうとするとやれ「いつもと違うカバンで来ちゃった」とか「事務所に忘れて来ちゃった」とかでサッと書き留めておくことが出来なかったりして。
だからって「後でまとめて」とか思ってるとそのうち記憶もおぼろげになってっちゃいますから。

そうなると結局、普段一番持ち歩くものっていうと、やっぱり携帯なんですよね。
そこで僕が行き着いたのがiPhoneアプリの「Evernote Food」ってやつです。
これ、行った飲食店に関する情報を写真とメモで残せるというシロモノでして、洒落たインターフェースと気軽な使用感でなかなか使いやすいんですよ。
SNSみたいにどっかに公開するとかじゃなくて、本当に自分用のメモって感じなので、そういう用途で探している方にはぴったりなアプリかと。

僕の場合は行った日にちと店名、覚えていれば食べたものなんかの情報、それと写真もiPhoneで撮ったのがあればそれを登録するって感じで、こんな風にどんどんたまっていきます。




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シンプル





さらにパソコンからEvernoteの自分のアカウントにログインすると、




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こんなページ





が自動で生成されているので“居酒屋”かなんかフォルダを作って、空いた時にでもそこに放り込んでおけば自分が行った居酒屋データベースが完成!というわけなのです。

このアプリ、Evernote“Food”と付いてるくらいで飲食に関するメモに向いているのは当然なんですが、それ以外にも写真と文章で残しておきたい事柄に使うのに便利なんじゃないかなーと思います。
読んだ本や聴いたCDの防備録とか、日記代わりとかね。
おすすめですよ。

さて、ここはまだ本題じゃなくて、先程この原稿を書くにあたって先月(2012年2月)のEvernote Foodのページを見返してみたんですよね。
すると飲みに行ったお店が、計22軒でした。

そう聞くと「2日に1軒以上も居酒屋に行くとんでもないバカだ」と思われるかもしれませんが、中にはハシゴの分も含まれますし、角打ちでちょっと1杯なんてのも1軒として数えてますので、案外これくらいにはなるもんなんですよ。

ただそれだけ行ってても、ここ最近、これといって連載で紹介したいお店は無かった感じなんですよねー。
もちろん全部ハズレだったとかではなく、もうすでに紹介したお店だったり、いいお店なんだけど取り立てて特徴が無かったり、あと何回かじっくり通ってからじゃないと真価がわからなそうなお店が多い月だったというか。

もちろん他にもまだ掲載したことのない、是非ご紹介したいお店はたくさんあるんですが、そういうとこも極力もう一度行ってからフレッシュな情報を提供したいですしね。

う〜ん、どうしたもんか…。

というわけで今回は、困った時の地元頼み!
いつもよりさらにゆる〜く、ご近所石神井公園の定食屋さんをご紹介したいと思います!


さて、どんよりと曇った日曜の午後、ようやく目も覚めて「腹減ったなぁ」なんて思い出す頃合い。
そんな時に候補に上がるのが今回ご紹介する「ほかり食堂」さんなんですよね。

一度浮かんでしまえば頭も舌もどんどん“定食モード”に突入してしまいますので、チャリンコをこいで出発です!
さぁ、5分もかからず到着しましたよ。




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ほかり食堂





不思議な響きですよね。
ご飯がほっかり炊けた、みたいなイメージでなかなか食欲をそそる店名です。

看板のフォントもかわいくて、見ようによってはレトロをイメージした今風のご飯カフェみたいなもんに見えなくもないですが、電話番号の頭に“3”が無いあたり、純然たる昭和ってやつですね。





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ショーウインドー





この安心の昭和感!
ラーメン、蕎麦、焼きそば、スパゲティ、カレーに定食と、もうこれぞ大衆食堂!ってなラインナップです。

ただしここに来たらまずチェックしたいのが今日の日替わり定食なんで、店頭のボードを確認してみましょう。




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左が今日の日替わり





口カツ、キスフライ、玉子焼き、きんぴらごぼう、ライス、みそ汁で650円か。
そそるじゃないっすか!もう決定!それ入店!

お店に入ると正面は、かなり広めの厨房。




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奥に大将と女将さん





約7割がテーブル席。




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掃除が行き届いてます





それから小上がり数席。




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もちろん漫画完備!





ちなみに先客は無し。

どうです?これで落ち着かない奴なんていんのか!?ってくらいの最高空間でしょう!

席に付くとすぐに優しそうな大将が「何にしますか?」と聞いてくれます。
こっちはもう決まってますからね!

「日替わり定食…」

と言いかけたところでちょっと欲が出てしまいました。

「それからご飯をカレーにお願い出来ますか?」

「大丈夫ですよ〜」

とのことで、日替わり定食の白いご飯の部分、大胆にもカレーに変更してしまいました。
ちょっと贅沢すぎたかなぁ〜。

だって、日替わり定食が650円でしょ。
ここの定食は−50円でご飯抜きが出来るんですが、ここにカレーの+500円が乗っかるわけで、計1,100円
頼み方としての効率はあんまりよくないですねぇ。

ま、いっか!だってカレー好きなんだもん!

無事注文を終えたところでそうそう!お酒は必ず頂きたいところですよね。
ここがほかり食堂の最高な部分なんですけども、ドリンク類は…




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ここ!





お店の片隅のガラス冷蔵庫から自分で持って来て、最後に合わせて会計するシステムなんです!

な〜んかこういう飲食店の、セルフ飲み物システムって楽しいですよね。
それに自分が常連さんの一員になれたような気もしてちょっと嬉しい。

価格もお手頃で、ビールの大ビンが500円缶ビールが300円ってな感じなんですが、どこまでもアンニュイな日曜の午後、選んでしまうのはやっぱり…




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麦とホップとほかり食堂





発泡酒!

250円のこいつをグラスに注いでチビチビとやっておりますと、日替わり定食のご飯以外の部分が到着しました。
大衆食堂らしくかなりスピーディーですよ。




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きんぴら





家庭的な味付けです。




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玉子焼き、おしんこ





玉子焼きは小振りながらきちんと中がトロっとしていて、醤油を垂らすと酒にもご飯にも合いそう。

おしんこは見た目通りの味ですが、日替わりメニューのホワイトボードには載ってなかったですよね。
こういうの嬉しいっす。




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一口カツ、キスフライ





そしてメインであるところの揚げ物!
どちらもサックリ揚がってます。

なんでこんな構図で写真を撮ってしまったのかと後悔しきりですが、キスフライの奥に見切れているのがカツです。
このカツ、普通のとんかつとはちょっと違うイメージで、なんて言うんでしょう、しょうが焼き用の豚肉、しかも厚めなやつ、それに衣を付けて揚げたような感じでして、形はグニャグニャなんですけどそこにソースが良く絡みます。
しかも一口カツとは言いながらもなかなか頼もしいサイズで、正確には“五口カツ”くらいな感じ。

このバラエティ感、否が応にもビールが進んじゃいますねー。

それから程なくして…




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カレー到着!





この頼もしさ!
ルーが絶妙にもったりとした“ザ・日本のカレー”ってやつですが、スパイシーさもきちんとあってなかなか美味しいんですよね。
「俺、やっぱりカレーが一番好きなんだよなぁ」としみじみしてしまう味です。

ところで、




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定食とカレー、それぞれのおしんこが!





ダブってしまいましたw
シチュエーションも含めて「孤独のグルメ」に出て来そうな展開ですね。

ともあれこれで役者は出揃いました。
時にフライ系にソースをかけてビールを!もしくは一口かじってカレーのかかっていない白いご飯を!さらにはルーにカツを浸してカツカレー風に!そしてもちろんビールを!
「必ず元は取ってやる!」とばかりに味の変化を楽しみながら食べ飲み進めます。


あ、ちなみにこのカレーにはおもしろいエピソードがあるんですよ。

このページを参照させて頂きましょう。

石神井公園の駅近くに、作家で壇ふみさんのお父上、檀一雄さんのご邸宅があります。
近所では有名でして、ちなみにこんな門構え。




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檀一雄邸





なかなかアバンギャルドな佇まいで昔から目立つ建物だったんですが、道路拡張計画の予定地にぶつかってしまったらしく、近々取り壊されてしまうようです。
仕方ないのかもしれませんが、なんとも切ないですねぇ…。

それはそうと、この壇一雄邸に一時期、あの「堕落論」の坂口安吾さんが居候されてたらしいんです。

で、何があったかは知らないんですけど檀一雄さん、坂口安吾さんの妻でありこちらも作家の坂口三千代さんと


「おい、三千代、ライスカレーを百人前‥‥」「百人前とるんですか?」「百人前といったら、百人前」


ってなやり取りがあって、


云い出したら金輪際後にひかぬから、そのライスカレーの皿が、芝生の上に次ぎ次ぎと十人前、二十人前と並べられていって、「あーあ、あーあ」仰天した次郎が、安吾とライスカレーを指さしながら、あやしい嘆声をあげていたことを、今見るようにはっきりと覚えている。


ってなことになったそうです。
カレーを百人前取ると言い出したらきかない大人…なかなか厄介そうではありますが、意味不明ながら豪快で楽しいエピソードですよね。

その時坂口安吾が真っ先に食べ出したというこのカレー、実は「ほかり食堂」と、その並びにある中華屋の「辰巳軒」の2軒が出前したのだそうです。

きっとその頃と味も、店内の作りもそれほど変わってないんじゃないかな?と思わせる、地元に根付いた昔ながらの食堂。
こんな話を聞くと、さらに味わいが増すってもんですよね。


さて、ビールを飲み切り、カレーを食べ終わったところで残っているのが玉子焼き半分、おしんこ1皿、カツの付け合わせのキャベツ、そしてみそ汁半分です。
こんなもん、サラサラッと平らげて「ごちそーさん!」とお店を出ちゃうのが粋ってもんですけど、そこは皆さんご存知の卑しさを存分に持ち合わせた僕のこと。

「これだけあれば…うん、飲めるな!」ってわけで、




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チューハイ(200円)追加!





ペース配分に注意しながらきっちりと堪能させて頂きました。




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ごちそうさまでした!





ってわけでそろそろお会計としましょう。
これだけ食べて、お酒も2缶空けて、ちょっと昼から贅沢しすぎましたね。

しかしまぁ、これでトータル




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1,550円





だってんだからいいじゃないですか?たまにはこんな贅沢も。


ちなみにこの日はこんな会話も聞きましたよ。
女将さんだと思っていたお姉さん、大将に対して敬語で話しかけてて、どうも普通にパートかなんかの方のようですね、「先代からもう何年くらいになるんですか?」なんてお店のことを聞いてます。
すると大将「もう73年かな?」って、サラッと答えてたけどすごくないっすか!?
創業73年!超老舗じゃないっすか!

しかしながらそんな威厳は全く感じさせず、もうずっと風景の一部のようにそこにあり続ける街の良心。
今後とも末永く住民の皆さんの胃袋を満たし、憩いの場であり続けて欲しいもんです。


しかし昼の酒ってやつは効きますね!
缶2杯でもうフワフワし出した頭で、いつも以上にヨタヨタと帰路へと着いた次第です。

というわけで今回はこのへんで!
よろしくっすー。





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ほかり食堂 - 石神井公園/定食・食堂 [食べログ]
辰巳軒 - 石神井公園/定食・食堂 [食べログ]
壇一雄
坂口安吾
坂口三千代



posted by パリッコ at 08:51 | Comment(0) | 第51回〜第75回
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