パリッコの沖縄レポートその3〜やんばるアグー編〜
パリッコの沖縄レポートその1〜入門編〜
パリッコの沖縄レポートその2〜市場と鮮魚編〜
沖縄の食肉文化は豚が中心で、「鳴き声以外は全て食べる」なんて、あんまり上手すぎて初めてこの表現を考えた奴のしたり顔が浮かんで来そうな言葉もあるようです。
思えば沖縄の名物として有名なソーキ(あばら肉)も、テビチ(豚足)も、ラフテー(三枚肉)も、みんな豚肉です。
この連載で登場する度に言ってしまうんですが僕、豚肉ってお肉類の中で一番好きなんですよ!
特に豚バラ肉、レオパルドン言うところの「脂身の多い豚肉」ってやつ。
もう34歳になるんで、そろそろ肉の脂身が苦手になって来ても良さそうなもんなんですけど、これがぜ〜んぜん!なんですよね。
そんな僕ですから、沖縄の豚肉はもう思う存分堪能したいわけです。
もちろん飲み屋ばかりでなく、ソーキそばに乗っかってるやつとか、ローカル感満載のお弁当のおかずなんかでもたくさん味わったんですが、やはりここはガツンと!沖縄の豚のポテンシャルそのもの!ってやつを体験してみたいと思いまして、焼肉屋さんへゴーしてみることにしました!
選んだのは、ゆいレールの「県庁前駅」と「美栄橋駅」のちょうど中間ほどにある「我那覇焼肉店」さん。
こちらはガイドブックに載ってたんで、けっこう有名なお店だと思います。
系列でしゃぶしゃぶがメインの「我那覇豚肉店」ってのもありましたが、我々は“焼肉店”へ行ってみました。

ごくごく一般的な、綺麗な焼肉屋さん
通して頂いたのは窓側を向いたカウンター席。

目の前に国場川
が流れており、開放感があっていいですね。
で、まずはここでもオリオンビール。
沖縄で飲食店に入るとこれが基本になっちゃいますよねぇ。
またここは値段も素晴らしい!
アサヒスーパードライが500円に対し、オリオンドラフトが450円。
オリオンの発泡酒、麦職人も置いてあってこれは298円。
さらに!17:00〜19:00はタイムサービスで、スーパードライが298円!オリオンドラフトは250円!麦職人はなんと100円!
100円ですよ?
ビールも何杯か飲んでると途中から発泡酒でもなんでもよくなって来ますし(あくまで僕の場合)、これはありがたい!
いやぁね、こちら、後述しますがお料理のメニューに関しても終始こんな感じで、元々が安っいのにさらに何かとサービスが適用されるんですよね。
これには参りました、いい意味で。
もちろん安かろう悪かろうなんてことはなく、感動的においしい豚肉をたらふく頂けましたので、そのへん、出来る限りご紹介していければと思います。

まずはお通し
山原豚のウインナー(2名分)で、ガーリック風味と薫製風味です。
もちろんこのままじゃなくて、各テーブルに備え付けられた小型のグリルで焼いて頂きます。
ウインナーに加工された状態ですが、元々の肉質がやわらかいことが噛んだ瞬間にわかる幸せな歯ごたえ!
強い豚肉の旨味と共に、じんわりと感じるにんにくや薫製の風味。
いきなり我那覇焼肉店の底力を感じさせてくれる1品です。
お次はですね、またしても使ってしまいました、クーポン。
東京で買ってったガイドブックに付いてたやつだったんですが、なんとアグー豚のロース(通常1,000円)1皿サービスです!

あぐーロース
この見事な赤身と脂身の配合!
これを

焼くと
明らかに上〜質な豚の香りが漂い始めます!
とろけるような脂と、しっかりした肉の食感、それぞれの部位が渾然一体となって、そして何より僕の大好きな豚肉のあの旨味!これが口中に広がって、脳ではなく身体が勝手に沖縄に移住することを決意しそうになりました。
ところでこのあたりで、沖縄島豚である“アグー豚”と“山原豚(やんばるとん)”についてご説明しておきましょう。
と言っても、僕も今ネットで調べただけなんですが。
まずは超有名なアグー豚。
これは特定の品種名というわけではなく、琉球在来豚の通称だそうです。
琉球王国時代より何百年と沖縄の人々と付き合って来た在来種というわけですね。
対して我那覇豚肉店で特に大プッシュされている山原豚。
まず、食用豚肉としてひらがなで表記される“あぐー”の定義は“琉球在来豚(アグー)の血液(オス方)を50%以上有すること”だそうです。
そこで純粋なアグー豚と、イギリスやアメリカ産の母豚と交配させて生み出された、“あぐー”の中の新ブランド、これが山原豚ということになるそうです。
お互いのいいとこ取りで、肉質は極上な上に、コレステロール値は一般的な豚肉の1/4らしいですよ!
すごいなー。
ではあらためて、先程のロースは“アグー豚”。
ここから以下出てくる豚肉は全て“山原豚”である、ということを前提に話を進めていきましょう。

豚ユッケ(650円)
最っっっ高だったなー!
きちんと管理しているからこそ提供出来るレア状態で、山原豚の甘味と旨味を味わえる。
火が通っている部分はサックリと、レア部分はトローッと、そこにアクセントの小ネギやゴマも加わって、1口の中にも何種類もの食感が混在し、さらに塩ベースのタレが肉のポテンシャルを引き出しきってます!
もはや牛肉では見ることが出来なくなってしまった“ユッケ”の文字列も、我々オーディエンスの興奮を最高潮に盛り上げてくれますよね。

牛ホルモンと島豆腐の味噌煮込み(500円)
ちょっと毛色を変えて“牛”メニューも頼んでみました。
これまた上質な素材が使われており、東京の居酒屋なんかで煮込みっつってこれが出て来た日には小躍りしてしまうレベルです。
しかしながら結果から言うと、他に頼んだ豚肉がうますぎて、この日はこれ以外は牛を頼まず終わってしまいました。
タンとか、カルビとかハラミとか、その他焼肉屋さんでよく見るような牛肉部位は一通り揃ってるんですけどね。
そうそう、今回の沖縄旅行で、東京から沖縄に移住したお友達と久しぶりに会ってご飯を食べたんですよ。
その方も「「沖縄の焼肉屋は豚肉がおいしすぎて、豚ばっかり頼んじゃう」って言ってましたね。
それくらい沖縄×豚ってのは密接で、切っても切れない関係が確立されてるんでしょう。
で、はー…、やっと紹介出来る!
実は我那覇焼肉店の最大の目玉と言えるメニューがあるんですよ。
それが、山原豚のホルモン各種!
全部で24種類もあります!
そのうち21種類までもが、なんと298円!
“ニクヤ”にかけてるらしいですが、これまたサービスし過ぎってもんです。
せっかくなんで全部書き出してみましょう。
コメカミ(頭肉)、カシラ(頭肉)、トントロ(首肉)、タン(舌)、ナンコツ(気管)、ノドブエ(声帯)、ドーナツ(のど元)、ハツ(心臓)、ハツモト(大動脈)、レバー(肝臓)、ハラミ(横隔膜)、チレ(脾臓)、マメ(腎臓)、ガツ(胃袋)、シロ(大腸)、ヒモ(小腸)、テッポウ(直腸)、コブクロ(子宮)、テール(尻尾)、テビチ(足)、オッパイ(乳房)
以上、全て298円!
その他もうちょっと希少な部位もあって、シロコロ(丸腸)、シキン(食堂)が380円、ブレンズ(脳)が限定10食で525円となっておりました。
もちろん「全部食いつくしてやるぜー!覚悟しとけよ山原豚!ゲヘヘー!」ってな勢いで、まずはいくつか頼んでみたんですが…

コメカミ

ハラミ

テビチ
これ全部298円のお皿なんだけど、とにかく量が多い!
味の方はもう言うまでもなくて、先程説明した山原豚の特徴である極上の肉質が堪能出来、コメカミ、ハラミあたりは特にもう、やわらか〜い!
今まで食べて来た豚焼肉の中でも一番やわらかいんじゃないでしょうか?
そこに旨味と甘味が詰まっていて、最高にも程があるってもんです!

ちなみにテビチを焼くとこう!
写真からでも肉の旨味が伝わって来るでしょう。
コメカミ、ハラミあたりのオーソドックス系から、このテビチ、さらに珍しい系をどんどん攻めていこう!ってな計画を立てていたんですが、もうこの3品の時点で満腹感は90%オーバーって感じ。
いや〜今回も不甲斐ない結果に終わってしまいそうですが、あまりのボリューム感にギブ寸前です…。
これ、本当大袈裟じゃなくて、どのくらい量がすごかったかっていうと、隣の席で1人焼肉をしてた地元の男性客の方と「多いですよねぇ」「多いですねぇ」つって、ちょっと仲良くなっちゃったくらいですもん!
その人「僕、もう義務感で食ってます」って言ってましたもん!
その辛さ、隣の席の者としてよ〜くわかるんで、

我々が頼んだチョレギサラダ(580円)
をお皿に取り分けて、「これ挟むと少しは楽になりますよ」と差し出したら、普通ならちょっと遠慮しそうなところですが、「助かります!」って慌てて食ってましたもん!
つまりそのくらい1皿ごとの満足感がすごいというわけで、可能な方は大人数で行かれることを強くおすすめします。
または、ホルモン5種盛り(1,480円)とか、ホルモンベスト3位盛り(929円)って感じで盛り合わせがいくつか用意されているので、それを利用した方が良かったのかもしれません。
それでは最後に、もうすでに限界を迎えようとしている我々ですが、それでもここの豚肉がおいしすぎて、「どうしても味わってみたい!」という気持ちに抗えずに頼んでしまった1皿をご紹介したいと思います。
もう、いきなり写真で。
こちら!

山原豚ステーキ(600円)
どうです?このインパクト!
ステーキという概念の完成形とも言えるフォルム!
テンションが上がらざるを得ない1皿です。
で、これを焼いちゃうわけですよ!
まず持ち上げて鉄板に乗せるのが一苦労。
片面を焦げ目が付くまでじっくりと焼き、ひっくり返してバターを乗せると途端に溶け始め、あの全人類を引きつけて止まない焦げた肉とバターの合わさった煙が立ち上り始める!

グリルを占拠する豚肉
ヤバい!これはヤバすぎる!
しばらくするとバターは溶け切って、肉の表面全体をコーティング。
そう、食べごろってやつです。
このビッグな敵にどうやって立ち向かうかというと、

豪快にハサミでカット!
切った端からうまそうな香りがどんどんどんどん攻めて来ます!
もう、興奮しすぎて写真がブレた!
うかうかしてて黒コゲにしたりしちゃったら悲しすぎるので、がっつくようにして頂きましたが、もう、心底ヤバい!
さっきから同じ感想しか出て来ないんですが、とにかくやわらかい!
こんなに分厚くて存在感のある豚肉なのに、ほとんど力を入れなくてもスッと歯で噛み切れちゃう!
なんなんだこの山原豚ってやつは!
もちろんバターで助長された甘味も旨味もマックスで、豚肉好きの僕としては、すでにお腹いっぱいなことも忘れて今日一番のピークタイムを迎えさせて頂きました。

ふ〜、食った食った…
究極の満足感。
お値段の方ももちろん、上の表記から想像が付くと思いますが、びっくりするほどリーズナブル!
またおいしい豚肉がたらふく食べたくなったら、飛行機に乗ってでも来たいと思うお店でした。
いや〜ここもまた、恐るべし沖縄!だったなー。
ごちそうさまでした。
そんなわけで今回も“今日の島ネコちゃん”コーナーでお別れ。
のんびりとした雰囲気が気に入りすぎて滞在中に2回も行ってしまった沖縄そば屋兼カフェ「すーじ小」さんの軒先にて、左右対称的ポジションでくつろぐこの2匹で。

次回は沖縄編最終回です〜!
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