絶品レバーとの嬉しい出会い
居酒屋に限らず、飲食店へ行った時の感想って、かなり乱暴ですが次の2×2、4通りに分けられると思うんですよ。
「期待して入った」or「期待しないで入った」
×
「良かった」or「ダメだった」
“期待”の要因は、お店外観の訴求力であったり、昨今は食べログ等ネットでの下調べであったり。
“良い”“悪い”の基準は味、値段、接客、面白味、等々。
人によってその要素は無数にあると思いますが。
この公式から導き出される4通りの結果を最高→最低の順番に並べていくと、
「期待しないで入った」ら「良かった」
↓
「期待して入った」ら「良かった」
↓
「期待しないで入った」ら「ダメだった」
↓
「期待して入った」ら「ダメだった」
僕の場合はこうなります。
上の2つがひっくり返る人とかはいると思いますけど、大体はみなさんこんな感じですよね?
今回はこの最上級“期待しないで入ったら良かった”の最たる例で、何気なくお邪魔した分、その良さに大変面食らってしまったお店をご紹介しようと思います。
先日、夕方のちょっと早い時間に一仕事終えて、次に予定のある時間まで若干時間が空いてしまったなー、ということがあったんです。
この後行かなきゃいけないのは下北沢。
時間は2、3時間ある。
よし、ちょっと知らない街でもフラフラしつつ、軽く飲める店でも探そー!
と、iPhoneで下北を中心に地図を表示し、歩けそうな範囲で降りたことない駅を探してみました。
そしてなんとなく選んだのが「笹塚」。
京王線で新宿からたったの3駅なんですが、今までの人生で1回も降りたことないような気がします。
東京にはこんな駅がゴロゴロあるので、街好きとしては本当に飽きないんですよね。
さっそく電車で笹塚を目指してみることにしました。
無事到着し駅の周りをウロウロ。
うん、やっぱり初めて来る街だ。
まずは北側、「10号通り商店街」を散歩してみます。

10号通り商店街
うおー、最高に楽しい!
前回までは沖縄に行って大はしゃぎしていた僕ですが、なんでしょう、それと同じくらいとは言わないまでも、知らない街の商店街を歩いているだけでその8割くらいのワクワクを感じてしまいます。
我ながら安いもんですね。
続いて、今いるのは下北方面とは反対側なんで、駅をまたいで「観音通り」へとやって来ました。
ここから下北へ向かう途中で一杯やれるとこでも見つけたいなー、なんて思いながら歩いてみます。
「常盤」さんって定食屋さんがあってそこもかなり惹かれたんですが、知らない街って欲が出ちゃいますよね。
「もうちょっと!もうちょっと行けばもっとそそる店があるんじゃないか!?」
こういうパターンって、得てしてめぼしいお店は見つからず、元来た道を引き返したりするもんですが、今回はこの判断が正解だった。
だって、ずんずん進んでお店もまばらになり、心細ーい街並になって来たあたりで、こんな店構えと出会っちゃったんですもん!

やきとりや 井口
焼鳥屋であること、店名が「井口」であること、アサヒスーパードライが飲めること。
必要最低限の情報のみで構成された佇まいが大変に好ましいです。
ガチャガチャしてなくて、いいなぁ。
壁に貼ってある焼鳥の値段も外から見えますが、割とお手頃そうな感じですよ。
前情報は全く無いですが、もう自分の中のモードは完全にここしかない感じになって来ちゃったので、いっちょ入ってみますか!
店内は、十数席のカウンターと奥にいくつかテーブルのある座敷というシンプルな構成。
時間が早いこともあり、お客は僕1人です。
メニューをささっと流し見て、とりあえずということで「あっさりキャベツ」と「ホッピーセット」を注文し、あらためて注文の吟味に入ります。

ホッピーセット(570円)
ずんぐりむっくりしたジョッキが可愛いですね。
かなりの量が入って重みも適度なこのジョッキ、うちにも欲しい!
おかわりの分のナカがあらかじめ付いて来るタイプで、ジョッキできっちり2杯分頂けました。

あっさりキャベツ(200円)
これがうまい!
ごま油×塩って感じの、あのたまんなくキャベツに合う味付けあるじゃないですか?
そこに、若干の酸味とフレッシュな風味を感じます。
レモンかな?
これは焼鳥の合間の口直しに最高だなー、なんて思いながらも、何も来てないうちからバリバリ食べちゃいました。
また行く時もまずはキャベツだな。
そして次、黒板メニューに、絶対に頼まざるを得ない文字列を発見してしまいました。
「白レバ焼(380円)」
これはいくでしょう!お願いします。
で、しばらくキャベツで飲んでいると、「ハイ、あと1本ももうすぐ焼けますからね〜」と、こんな1品が目の前にやって来ました。

?
あれ、なんか串なんて頼んでたっけ?
頭の中にはてなマークが浮かびましたが、お客は自分1人ゆえ間違いってこともないだろうしと、ひとまずかじってみます。
……!!!!!!!!!!
うまい!!!
大げさではなく、ここで脳天を打ち抜かれたような、目が覚めるほどの衝撃を受けてしまいました。
取り立てて大きな期待もなく入ったお店で何気なく頼んだこのメニュー。
1口かじっただけで急に脳がフル回転しだし、フツフツと血液が熱くなって来るのを感じます。
これ、さっき頼んだ白レバーですね。
ぼんやりと、お皿にゴロゴロッと焼かれたレバーが出てくるようなのを想像してたので、そのビジュアルの差にも驚かされました。
見て下さいこれ。

わかるかな?
まず白レバーを串に刺し、周囲に隙間なく薄〜い豚バラ肉みたいなんが巻き付けてあります。
物凄く手が込んでる。
普通の串と比べて焼き加減だって難しいでしょうに、全体に均一に火が通っていながら表面はうっすらと焦げ目が付く程度。
これが奇跡の美味を生み出していまして、プツンッとソーセージの様な歯ごたえの後に広がるのは、巻いてある方の肉の香ばしさとジューシーさ。
時間差でまったりとした白レバーの舌触りが口内に溶け出し、またこのレバーのクセのなく上品なこと!
完全に初体験の味です。
2種類の肉の味が錯綜し、食感の違いがエンターテイメントとなり、これは幸せだ!
ゆっくりと1本を食べ終えたところで追加の1本も到着。

3本がデフォルトなんですね。
これで380円はお得すぎでしょう!
こちら、黒板にチョーク書きのメニューだったので、帰り際女将さんに「白レバ焼は、いつもあるんですか?」と伺うと、笑顔で「ある時はありますよ」ってなお返事でした。
どうやら本数限定らしいので、早めの訪問が肝心かもしれませんねー。
ここでもう、お店に入った時とは別人のように目の輝き出した僕。
絶対に他の串も間違いないだろうなーと一通りチェックしてみます。
ハツ、タン、レバ、カシラ、ナンコツ、シロ、以上は全て90円。
トリ、トリカワ、ネギマ、スナギ、モツクネ、こちらは100円。
安いな!
何本かお願いしてみましょう。

手前から、シロ、カシラ、ナンコツ(各90円)
シロは薄めですが臭みゼロ。
お任せでお願いしたタレが香ばしさを引き立てて文句なくうまいです。
ナンコツも丁寧な下処理で、歯ごたえと周りの肉の旨味の両方が味わえる。
塩加減も本当に絶妙ですね〜!
そして特筆すべきはカシラ!
大好きな部位ですから「うまい、うまい」と食べていたら急に食感が変わった!
油断してましたねー。
写真を見てみて下さい。
先端から3つめの肉だけ質感が違いますよね?
そう、この3つめだけがトントロっぽいような部位になっていて、カシラの串だからカシラアブラなのかな?サッパリ→サッパリ→ジューシーって感じで急に味わいが変わるんです。
これが口の中で混ざってしまうわけで、そりゃーうまいよなぁと。
いや〜、重ね重ね、エンターテイメント性のあるお店ですね〜!
続いてつくねも到着。

つくね(100円)
これまたおもしろい!
シュウマイとか肉まんっぽいような、中華テイストを感じます。
焼鳥屋のつくねには珍しいタイプ。
もちろんおいしくて、なんなら今すぐにでも食べに行きたいくらい、クセになっちゃう味なんですよね。
う〜ん、井口、すごいお店に入ってしまったな!
ちなみにこれらの串を頂く間に挟まれてたドリンクですが、

ウーロンハイ(330円)
持って来る時にちょっとカウンターにこぼれちゃって「すいません」なんておっしゃられてましたが、マスター、たっぷり注ぎすぎですよ!w
もちろん嬉しいんですが。

芋焼酎(380円)
こちらも頼もしいグラスにたっぷり。
焼鳥との相性もバッチリですねー。
さて、常連さんもチラホラお見えになり始めましたし、以上でかなり満足してしまったのでそろそろ行きましょうか。

ファッショナブルな常連さん
お会計は、こんだけ飲んで、こんだけおいしくて、トータル2,220円!
あ〜、また行きたいなぁ。
次に行く時は「期待しないで」が「期待して」に変わっちゃってるんだろうけど、それでも確実に満足させてくれるんだろうなぁ。
ってな感じで今回もおしまい。
あ、ところでお店を出た後、まだもう少しだけ時間があったので吸い込まれるように入った並びのバー「北沢ぬーぼー」さん。
ここがまた個性のあるお店で、マスターもお客さんも穏やかで居心地が良く、またゆっくりと飲みに行きたい1件でしたので、合わせておすすめしておきます!

北沢ぬーぼーのホタルイカ薫製と泡盛
より大きな地図で パリッコの「大衆酒場ベスト1000」 を表示
井口 焼鳥店 いぐちやきとりてん - 笹塚/焼鳥 [食べログ]
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