大衆酒場ベスト1000

2013年05月16日

第84回「ふく木(那覇)/ソーメンチャンプルー」

沖縄で、ついに出会えた心の故郷、第二の実家と呼びたいお店!

まずは前置きから。

今回ご紹介するお店をこうして記事にし、ネット上で紹介して良いものか、実はかつてないほど悩みました。

というのも、あまりに小さく、素朴で、そして温かい、地元の方々の隠れ家的なお店だからです。
自分たちでもここを発見出来たことを誇りに思い、そして出来れば秘密にしておきたいからです。
いつもこういうジレンマには悩まされているわけですが、今回は特にでした。

しかし、自分の居酒屋体験の中でもとりわけ強烈だったこのお店との出会いを記録せずして、何が「大衆酒場ベスト1000」か!
そして何より、たった2回の訪沖で十分に思い知らされた“沖縄の懐はこちらの想像を遥かに超えて深い”という事実があります。

悩んだ末、僕は東京から女将さんに電話しました。

やはりというかなんというか、こちらの体調や一緒に行った妻、友達の様子を気遣ってくれたり「こっちは昨日から梅雨入りしたよ」なんて世間話に心が温まります。
そして本題「すいません、ふく木のことをインターネットに書いてもいいですか?」と伺うと「大丈夫よ〜、よろしくお願いします」とお返事を頂きました。

ならば心置きなく!というわけで、今から沖縄で出会った最高すぎる居酒屋について書こうと思います。
ただ、僕が調べた限りインターネット上には1つも情報のないお店です。
すみませんが、場所については、ゆいレールの旭橋駅から歩いて行ける範囲、とだけ記すに止めさせて下さい。
もしこの記事をお読み頂き「ここに行ってみたい!」と思われた方がいれば、お酒の神様の導きにより、きっといつか辿り着けるはずです!
…と、無責任なことを言いつつ。


そう、まだご説明してなかったですが、また沖縄に行って来てしまったんです!

またしても妻が航空券のセール情報をゲットし、僕に提案してくれるというありがたい経緯で、本当に驚くほど安く沖縄に行くことが出来ました。
加えて今回はそれだけじゃないんですね。
なんとお馴染みチミドロのナオさんも同じセールの情報を見て「良かったら予定合わせて行きませんか!?」と提案して下さったんです!
なんというかもう、僕だけがボーッとしているところに、こうやって色々と誘ってもらってしまい、面目ないやらありがたいやら、本当に感謝の気持ちしかありません。

というわけで瞬く間に予定が決まり、沖縄行きのスケジュールは、我々夫婦が4泊5日。
ナオさんと、同じくチミドロのミヤマさん、そしてナオさんの同僚の山中さんの3人が強行軍の1泊2日で、初日と2日めをご一緒させてもらうことになりました。

こんなの楽しくならないわけがない!って感じで、飛行機に乗る前からビールで乾杯し、昼時には那覇空港へ到着。
沖縄そばやら、おでんやら、栄町市場やら、とにかくドンチャンドンチャンと最高の沖縄初日を過ごしました。

そのあたりのことは次回以降に書ければな〜と思うのですが、とにかく時が経つのはあっという間で、時間は23時過ぎ。
少し疲れが出て「先に戻ってようかな」という妻と、それではあんまりかわいそうなんで、一度みなさんと別れて宿泊先へ。
その後「せっかくの沖縄だし、行って来ていいよ」という妻の言葉をありがたく真に受け、宿の最寄り駅、旭橋へと戻って来たみなさんと、僕だけが合流しました。

昼間から飲み食いを続け、もちろんハズレのお店など1軒もなく、出て来る言葉といえば「沖縄最高!」ばっかり。
最後にもう1軒だけ、どっかに飛び込んでみたいなぁ、っていうモードです。

実は前回沖縄に来た時も同じホテルを利用したんですが、その近くにこじんまりとした何軒かの飲み屋が集まった、気になる一画があったんですよね。
「よかったらちょっとそのへん、行ってみませんか?」と提案し、男4人で向かいます。

ところが目当てだった数軒のお店はことごとく閉店後。
残念だな〜と思いながら路地を覗き込むと、奥の方〜にポツンと1つだけ灯っている赤ちょうちんが見えます。

「なんだかすごい雰囲気ですね、一応前まで行ってみましょうか」と、恐る恐る歩を進めます。

そのまま異界へと通じていそうな、寂しいにも程がある小道。
その最深部にこんなお店がありました。




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ふく木



経年変化でお化けみたいな形になった提灯に店名が書いてありますね、「ふく木」さん。
コンパクトな平屋の前面に小さな窓が1つ、障子がはめ込まれていて中は見えず、ボーッとした穏やかな光だけが漏れています。
耳をすましてみますがとても静かで、店内の様子が全く読めません。

もうここらで諦める方も多いと思いますが、我々は逆に気になって仕方がない性分。




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オリオンの看板



があるから大丈夫だろう!という謎の判断基準で自分を奮い立たせ、そっとお店のドアをノックし、ゆっくりとドアを開けます。

手前の座敷で常連さんらしきおじさま2人が将棋をパチリと。
他にお客さんはいません。

奥にいた女将さんがこちらに気付き、さすがに我々くらいの年代の一見客は珍しいのか、ちょっと驚いた顔を見せた後、すぐに笑顔になってカウンターに迎え入れてくれました。

勝手がわからずただ座っていると「何飲む?お腹は空いてる?」と親切に聞いて下さり、「お腹はほとんど空いてなくて、少し泡盛を頂きたいです」と伝えると、久米仙をガラスの1合徳利に注いで出してくれました。

これでやっと人心地。
「いい雰囲気ですね」なんて話しながら飲んでいると、将棋が一段落した常連のおじさまの1人がカウンター内に入り、「よくここに来たね〜、ここは隠れ家的なお店だから!」と乾杯してくれ、すっかり緊張もほぐれます。

さらに女将さんも優しい口調で話しかけてくれます。

女将さんはハルコさんと言い、この建物は築60年、ここでお店を始められて30年だそうです。
近くの那覇港が今よりも栄えていた頃は、お店の前で缶ビール片手にオープンを待つ常連さんまでいたそうですが、今はすっかり落ち着いたとのこと。
「今度は電話してから来てね。美味しいもの用意しとくから。」なんて嬉しい言葉とともに、全員で携帯の番号を交換させて頂きました。

さらには東京に出ているカズナリ君(仮)という20代のお孫さんがいるらしく、「電話してあげて〜。優しい子だから。とってもひょうきんだから。」と彼の電話番号まで教えて頂きましたw
いくら優しくてひょうきんだからって、いきなり我々のような得体の知れない年上の男から電話がかかって来たら恐怖以外の何物でもないでしょうが、それだけ家族的に迎えて頂いたということでしょう。

ここに入ってからというもの、




0516_03.jpg
全員ずっと絶え間なく笑顔



です。

それから、サービスでこちらを出して頂きました。




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もずく酢



ほっとする味付けでものすごくおいしいです。
土地の料理は土地の酒と合いますね。

さらに追加でこちら。




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味噌味の豚肉?



こちらも1人に1皿ずつ。

これ、ちょうど親戚から送って欲しいと頼まれて仕込みを始めた沖縄特有の調味料“肉みそ”の、完成前の物だそうです。
豚肉を油を使わず炒め、肉の脂がよく出て来たら、味噌と黒糖で味付けをして煮詰めていくと出来上がるわけですが、その初期段階で、言わば豚肉の濃厚味噌炒めって感じでしょうか。
こんなに大ぶりに使うんだ!と驚くほど厚みのある豚肉に、甘味と味噌味が絡んで心からうまいです!

貴重な物を頂いてしまいました。
ハルコさん、知人からよくこの肉みそを頼まれるそうで「今度は電話くれたら作っておいてあげるから」なんて、もう涙が出るほど嬉しいお言葉。

もうこの時点で実家に帰って来たような居心地の良さに身を任せていたわけですが、嬉しい振る舞いはこれだけでは終わりませんでした!




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こんな瓶



に入った貴重〜な泡盛の古酒、これを「なんだか孫が来たみたいだから」と言って、おちょこに1杯。
さらにもう1種類、計2杯も出して頂きました。
もうこの瓶に入っているだけしか無い、本当に貴重な代物です。

これを少しずつ回し飲みしますが、どちらも泡盛独特の刺激的な華やかさは消え、まったりと口当たり良く、歴史を感じさせる芳醇な旨味の集合体といった味わいで、驚くばかり。
泡盛、古酒、本当に奥が深いんですね。

だけどこの美味も、たいそうなお店でたいそうな値段を払って頂くのとはまた違い、ハルコさんの温かい心遣いを感じながら頂けたからこそ、舌だけでなく全身全霊で味わえたことに間違いはありません。

この時点で我々全員、ふく木を第二の実家だと思い込んでます。

ハルコさんは写真は恥ずかしいということで、ちょうど顔が半分隠れたこちらで、空気感だけ。




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沖縄のお母さん



ゆっくりと4人で泡盛を2合頂き、名残惜しいですがもう24時を過ぎてますし、今日はそろそろおいとましましょう。

実は途中、やっぱり一抹の不安はありましたから、「お酒の値段はどんなような感じでやられてるんですか?」なんて軽〜く聞いてみたんですね。
そしたら「あ、怖かったんでしょう?そんな値段とらないから大丈夫よ。これ(泡盛)は1本600円で。」と、完全に見透かされ、安心させてくれたのもありがたかったわけですが、お会計を聞いて唖然としましたよ。

「じゃあ1,500円ね」

4人でですよ?
上に書いた、おつまみや古酒全て含めて。
4で割ると…1人375円!?
ちょっと信じられなくて何度も計算しちゃいましたが、やはり間違ってないようです…。

「すみません、今度は料理もたくさん注文しますから」と、ありがたく支払いをすませてお店を後に。

沖縄の初日の夜は、夢のように素晴らしいラストとなりました。



…がしかし!ここでは終わりません!まだ続きます!

2日目も5人でワイワイと楽しみ、空港に帰ってゆくナオさん一行を見送った我々夫婦ですが、こちらはまだ何日かの沖縄滞在が残っているんですよね。
その間飲み食べ中心に、前回にも増して色々と堪能することが出来ました。

そして最終日の夜、一番行きたくなったのはやはり、ふく木。




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また来たよ!



今日は沖縄独特の文化である“模合(もあい)”の会合があるようで、座敷席に6、7人のグループがいて愉快そうに飲んでおられます。

初日に乾杯して下さった常連さんもいて「また来てくれるなんて嬉しいね〜」と。
いや、こちらこそです!

その常連さんとハルコさんに模合についても詳しく教えてもらったんですが、ここに書くと長くなるので、気になった方は調べてみて下さい。
Wikiに載ってるから!

さて今日は胃に余力を残してやって来ました。

その方がハルコさんも喜んでくれるんじゃないか、なんて、こちらの勝手な思い込みに過ぎませんが、「お腹が空いてる」と言えばやはり嬉しそうな顔をしてくれます。
本当に、いいなぁ…ふく木。

ただし、メニューというかなんというか、




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黒板



には味のある文字で料理名が羅列してあり、「ぜんぶおいしい たべて」と書いてあるだけですね。
まぁ沖縄のこいういった居酒屋は常連さんがメインで、みんな勝手がわかってるし、食べたい物を言えば作ってもらえるというシステムは一般的なようですから。

というかそれ以前に、何も注文してないのにまず、




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ゴーヤーチャンプルー



が出て来ました!

ゴーヤー、玉子、ポーク、それらをまとめる出汁の味。
オーソドックスな1品でありながら、本っっっ当にうまい!
人柄、優しさがにじみ出ていて、お金をつんで食べようと思っても食べられない、お店の味ではない料理。
最終日の感傷も手伝ってか、涙が出そうです。

さらに




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ソーメンチャンプルー



綺麗なものですねー!
常連さんがイチオシされていただけあって、これまた絶品。
パラパラとほぐれも良く、麺どうしがくっつくなんてことは全然ないです。
「本当は青いネギを使った方が美味しいんだけど、無かったから」とおっしゃられてましたが、白いソーメンに白いネギが触れがたい美しさを演出しています。
とはいえ食べ始めたら止まらず、かなりの大皿で出て来たんですが、あっという間に平らげてしまいましたが!




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もずくの天ぷら



まだまだ出てくる!
これまた沖縄ではオーソドックスな1品ですよね。
衣が厚くしっかりと味が付いて、もずくの風味がアクセントになり、さらにプリプリとした海老まで入って、うん、沖縄で食べた天ぷらで一番うまい!

揚げ物追加で




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チーズ入り揚げ餃子



がっついて1つ口に放り込んでしまってから写真の撮り忘れに気付いたんですが、こちらが2人なのでもちろん2つずつ出してもらってます。
急に居酒屋メニューみたいになりますが、これまた最高。




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野菜と白滝の炒め



「沖縄風じゃないけどね」とハルコさん。
いえいえ、こういう家庭料理も本当にしみじみとうまいです。

妻が僕に「ご飯にも合いそう」とポツリと言うと、もちろんちゃんと聞いていて「ご飯あるよ!食べる?」と声をかけてくれます。
いえいえ、確かに絶対合いそうだけど、もうお腹は一杯なんです!

それではまたしても本当に名残惜しいんですが、そろそろ夜も更けました。

今日は泡盛は1合、お茶を2杯もらったかな。
あとは上記の料理。

さぁ!こないだ全然お金を払ってない分、今日はちゃんと取って下さいよ!
ってな気持ちで「お会計をお願いします」と声をかけると…


「じゃあ1,500円」


!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

一体どういう計算になってるんですか!!!!?

もっと取ってもらいたいくらいの気持ちなんですが、「安すぎますよ!本当にいいんですか?」と聞いてももちろん「大丈夫よ〜」というお返事しかもらえません。

ありがたく、そのお気持ちを素晴らしい時間と共に思い出にさせて頂きます。

ごちそうさまでした。
本当に美味しくて、素晴らしい時間でした。


ふく木は、僕が沖縄に行く際には必ず寄りたいお店になりました。
ただ、あれなんですよね、ここはもちろん素晴らしすぎる奇跡のようなお店ですが、実は沖縄にはこういう名店が他にもいくらでもあって、それぞれが見つけ、それぞれが心の故郷にするのが正しい楽しみ方だと思うんです。
だからこそ今回記事にするのをためらった部分もあるんですが、まぁ、個人的にもこうしてまとめておけて良かったな。

また必ずこうして、




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この空間の一部に



なりに来ます!


実はふく木に関してはエピソードが満載で、まだまだ書こうと思えば書くことはたっぷりあるんですが、今回はこのへんで。

あと2回ほど、僕の浮かれっぷりが鼻に付く沖縄編を続けさせてもらってもいいでしょうか…?
だって、他にもすごすぎる店いっぱいあったんだもん!
すんませんが、よろしくお願いします。
では!




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ハルコさんが帰りに持たせてくれたクッキー



この写真も涙なしには見れません…。




告知

2013年5月18日(土)
「LBT」ナイト
東中野 バレンタイン

開催時間 / 20:00
当日料金 / 無料
※ノーチャージ、オールスタンディング、キャッシュオン

DJ /
 showgunn
 ハナーイ(チミドロ)
 DJイオ
 パリッコ
 ツージー(鼓膜シュレッダー)

出演者5人のフェイバリット駄菓子をパッケージングした「おやつセット」を格安販売予定!
お酒のつまみに是非。



2013年6月8日(土)
CLUBLOVELYvol.3
新宿 FNV

開演時間 / 24:00
当日料金 / 2,000円(1ドリンク別料金)

DJ /
 掟ポルシェ
 BUBBLE-B feat. Enjo-G
 パリッコ
 DJイオ
 Nachu
 オッチー

VJ / gatotsu

テキーラガール /
 内山沙千佳
 佐伯とも

FOOD / 缶ベキュー



























posted by パリッコ at 10:02 | Comment(0) | 第76回〜第100回
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