大衆酒場ベスト1000

2013年06月03日

第85回「大鵬(久我山)/久我山名物 牛焼」

また1つ街から姿を消す、昭和の遺産

この原稿を書いているまさに今日、2013年5月31日、今回ご紹介するお店「大鵬」さんが閉店されるそうです。

「じゃあ読んで行きたいと思っても行けないじゃん!意味ねー!」、全くその通りです。
しかしここで記しておかなければ、この名店の素晴らしさを世に伝える情報がこれ以上増えることはほぼ無いと言ってよく、従って自分なりのはなむけのような気持ちで、神妙にキーボードを叩いている次第です。

よろしければお付き合い下さい。

ちなみに前回に続く沖縄編は、あまり連続しても空気感が偏ってしまうので、1回置きくらいに更新していこうかなーと思ってます。


現の世というのは儚いもので、どんなに歴史のある名店も、大好きなあんなお店こんなお店も、無くなる時には綺麗さっぱり無くなってしまいます。
当然と言えば当然ですね。

安田理央さんが書かれた、江古田の老舗喫茶店「トキ」さんに関するこのエントリーも記憶に新しいです。

全ての店はいつか無くなる!自分にとって大事な店を大事にし、気になった店には早めに行っておこう!という想いが強くなりますね。
僕も今まさにそんなモード真っ只中なわけです。


ことの発端は、親しくお付き合いさせて頂いている片岡ハルカさんからの1通のメールでした。

ちなみに片岡ハルカさんは100yenLABELのオーナーとして、プログラマーとして、多彩に活躍されている有能な男性です。

そのメールには大まかに「久我山に大変味のある佇まいの名店があり、特に壁のメニューが味わい深い。今度行きましょう」ということが書かれておりまして、親切にもお店の壁の写真が添付されていました。

それが本当に素晴らしく、「他の壁…他の壁も見てみたい!」とお店への好奇心が広がるばかり!
何よりこのようなご連絡を頂いたことが心から嬉しく、「是非!」とお返事をし、訪問が実現したのが先月でした。


では行ってみましょう。

吉祥寺から渋谷を結び、ハイソなイメージに思わず憧れを抱いてしまう京王井の頭線。
大鵬は久我山駅前からはけっこう離れた場所にあり、徒歩約10分ほど。

お!味のある外観を発見しました。




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大鵬



“創業昭和43年”の文字が頼もしいです。

久我山には別の用事もあって早めにやって来たので、まだ営業前ですね。
それをいいことに、様々な角度から舐めるように眺めつくします。




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正面から大鵬



ところでこのお店、あまりにも素晴らしすぎるシチュエーションに存在しまして、まぁご覧下さい。




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大鵬、路地、川



なんと玉川上水の川辺に存在するんです!

いいでしょう!?

細い路地を挟んでサラサラと流れる小川。
水辺っていうのはどうしてこうも人の心を落ち着かせるんでしょうか。
春夏秋冬いつ来ても確実に素晴らしいに違いない、もう入るまでもなくわかる名店です。

まぁもちろん入りますけどね。

開店時間を待って、




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おじゃまします



っと。

やっぱりな。
案の定、いい!

カウンターのみのこじんまりとした店内に、興味をそそるアイテムが所狭しと並び、視界に入るもの1つ1つをしみじみと味わいながら飲んでたら簡単に5時間くらい経ってしまいそうです。




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ハルカさん、ガラス戸、その向こうに玉川上水





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STRONG ZEROの原液紙パック、初めて見たな



ではまずは生ビールで乾杯しましょう!




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泡立ちはご愛嬌



この日は4月末だったのですが少し肌寒いくらいの気候で、二代目でしょうか?意外にも若々しい大将が、「寒いでしょう?」と電気ストーブを付けて下さいました。




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これまたいい味



僕は基本暑がりなので全然大丈夫だったんですが、次第にポカポカして来る店内でボーッと冷たいビールやホッピーを頂くのは、なんとなく今年最後の冬を懐かしんでいるようで気分が良かったですね。




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ホワイトボード



から気になる品をいくつか注文し、いよいよあらためて、本日のメインイベントとも言える“壁メニュー”観賞タイムに入りましょう!




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おおお〜!



長年、燻されて燻されて、黄色と茶色が入り混じり、かろうじて文字が判読出来るレベルまで変色した短冊。
僕にはまるでべっ甲のように美しく見えます。

「この素晴らしいメニュー、貼ってからどのくらい経ってるんですか?」と伺うと「いや〜、30年くらいですよ!」と大将。
表の看板に創業昭和43年とありましたから、お店の歴史は45年以上。
途中で貼り変えられはしたんでしょうが、それでも30年という重みのある年数をサラッと言い放つ感覚には惚れ惚れします。




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額入りのスーパードライのポスター



も、1987年の発売当時くらいのものなんだろうなぁ。

料理がやって来ました。




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たけの子と山芋ニンジン煮/400円



間違いないでしょう?
豚肉が入り、上品ながらも力強い旨味がたっぷり。
印象に残ったのが山芋で、サラッと煮込んだような見た目ですが、サクサクとした歯応えがほとんど消え、里芋のようにネットリとした食感。
珍しくてバクバク食べてしまいました。

串物は、




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レバー タレ/100円





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上もつ 白もつ 塩/各100円



だったかな。

絶妙な焼き加減、塩加減、タレも絶品、間違いないうまさでしたよ。

次はいよいよ大物です。
メニューにも“久我山名物”とあった、




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牛焼/400円



やわらか〜い牛肉を鉄板で焼き、大根おろしをオン。
これをシンプルに酢と醤油で頂きます。

これが絶品!

こんがりとした焦げ目によって引き立てられた、牛肉の脂っぽくジューシーな旨味。
これを酢と大根おろしが、食べながらにして壮快に洗い流してくれます。

この食べ方は家でも真似出来そうだし、クセになりそうだな〜。
でもやっぱり、大将の手による、年季の入った牛焼にはかなわないんだろうな。

さて、今日は早いですが、久我山の別のお店も気になるし、この辺でお会計にします。
またちょくちょく来たい、いいお店を教えてもらったな!

…なんて思っていたら、まさかこれが最後の1品になってしまうとは…。


今回のお店に大鵬を選んだ経緯なんですが、いつもの締切がやって来て「どこにしようかな〜」なんて写真フォルダを覗いていたんですよ。
で、「大鵬か、ここはあと何回か行ってからがいいかな」なんて思いつつ、しかし何気なくネットで検索してみたんですね。
そうしたら常連さんによる、「2013年5月31日で惜しくも閉店」という情報を目にしてしまった。
なので、どうしたってこれは他のお店を書くわけにはいかなくなったというわけです。




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こんな





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素敵な





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空間に



もう2度と身を置くことが出来ないとは。

夏の蝉しぐれや秋の虫たちの声を聴きながら、窓の外にちらつく雪や花々を眺めながら、色んなシチュエーションで楽しみたいお店だったんですけどね。

僕のような1度行ったくらいのペーペーでもこんなに寂しいので、古くからの常連さんの心境いかばかりかと推察します。

ちなみにハルカさん曰く「玉川上水の開発立ち退きで、あの一帯では最後に残った建物」だったそうで、そういう意味でも本当に貴重なタイミングで行くことが出来、幸運だったんですね。

あらためて、自分の大切な店を大切に、気になる店には早めに、心に刻み付けたいと思います。


…さて、ここまで読んで頂いた皆様に朗報!!!

実は先ほどの常連さんの書き込みには続報があって、大将は別の場所でこの「大鵬」を再開する気満々らしいです!
現店舗の大鵬は一度幕を閉じてしまいますが、絶品の串や料理の数々は、きっとまた食べられる日が来るはず!

良かったなぁ。
そうなったら今度こそ何度でも行って堪能しつくすぞ〜!

というわけで、僕もアンテナを張って情報集めていこうと思ってますので、みんなで期待して待ちましょう〜!

大将、待ってます!





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やきとり大鵬 - 久我山/居酒屋 [食べログ]




告知

























posted by パリッコ at 10:15 | Comment(0) | 第76回〜第100回
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