大衆酒場ベスト1000

2013年07月02日

第87回「福ちゃん(浅草)/牛スジ焼きそば」

大観光地浅草のディープスポット

最近ふと、自分がなんでこんなに居酒屋、それも昭和の残り香を感じる古い店、場末の店にばっかり興味があるのかを考えてみたんですよ。

大前提なのはもちろん“酒が好き”という事実。
世の中にはほんの一口のお酒を飲んだだけで具合が悪くなってしまう、お酒を受け付けない方というのも大勢いらっしゃいますが、僕は体質的に合う方だったんでしょう、お酒が美味しいと感じるし、飲むと楽しくなる。
加えて翌日あまり二日酔いをしないというのも大きいかもしれません。
必然、飲める年齢になってからは居酒屋に行く回数も増えました。

また、僕が子供の頃、祖父母が板橋区で小さな町工場をやっており、1階は工場、2階は住居という不思議な作りの建物とその周囲は格好の遊び場でした。
そのすすけた、過度に昭和的下町的風景は、もう無くなってしまった今でも思い浮かぶほど鮮烈に覚えており、そこに対するノスタルジーみたいなものもあるのかもしれません。

ただ、それとは全く別方面からの要素もあるのでは?ということにも思い当たったんですよね。

話は急に変わりますが、高校くらいで電気グルーヴの洗礼を受けまして、以来現在までずっとダンスミュージックを作り続けていることからもわかる通り、当時のテクノ周辺のカルチャーは、自分にとってそれは衝撃的だったんです。
そういう方、この連載を読んで頂いている方の中にも多いんじゃないでしょうか?

で、もちろんサウンドにどっぷりハマったというのはあるんですが、加えてそこから派生する様々な文化が当時の僕にとって他のどんなことよりもエキサイティングだったんです。

例えばこの動画をご覧下さい。





グルーヴ地獄V オープニング



1998年にプレイステーションで発売された、電気グルーヴがプロデュースしたゲームです。
内容に関しても、何から何まで常識外れで最高だったんですが、その辺は気になる方は調べたりしてみて下さい。

特筆すべきはこのオープニングで、今や珍しくもなくなったコンピューターグラフィックス、CGというやつですが、まだ最先端という感覚のあったこの技術で“薄暗い高架下”の風景を描く。
これがあまりにも強烈なインパクトとして自分の中に刷り込まれてしまったことは間違いありません。

また時代はもう少し遡りますが、僕が中学の頃カルト的な人気を博していた(一応)子供向け番組「ウゴウゴルーガ」。





ウゴウゴルーガ 第二期オープニング



これも衝撃的だった!
新宿の思い出横丁と狂気的なロボ、不気味なサラリーマンたち。
意味不明だけど異常なパワーを感じます。
これが朝の7:30に民放で流れてたって…。

世の中的に最も革命的だったのはやはりこちらでしょうか。





Extra/Ken Ishii(1995)



テクノ・ゴッド(今聞くと恥ずかしいネーミングだ)ことケンイシイ氏と、アニメーターの森本晃司氏がコラボレーションしたPV。
これにやられてしまった同世代のテクノキッズは多いと思いますが、ここにも赤ちょうちんや横丁といったモチーフが多数登場し、中盤には何故か画面内のスクリーンに、焼鳥みたいなのを食べているケンイシイご本人の映像まで写っています。

とにかく、こういうサイバーパンク的世界観とテクノという音楽の親和性は高く、そこに欠かせないのがアクセントとしての昭和的、場末的な味付けだったんですよね。

ちなみに、その辺の元祖というとやっぱりこれになるんでしょうか?





ブレードランナー



まぁあまり詳しくないんでわかんないんですが。

結局何が言いたいかというと、10代の頃テクノやサイバーパンクといったフューチャリスティックなものに心酔していた僕が、そこにアクセントとして登場する昭和感、場末感も同時に刷り込まれ、それが酒とリンクし、今や何故かそこにばっかりこだわっているのではないか?という結論なんです。

こうしたアジア的雑多感、昭和感を感じられる場所というのは、現実世界にもたくさん実在していて、究極はこれでしょう。





九龍城砦



1994年には取り壊されてしまった建物ですが、とてもこの世のものとは思えません。
怖い!けど入ってみたい!という好奇心を抱かずにはいられないんですよね、個人的には。


長くなりましたが、そういう好奇心を満たし、非日常観を楽しむ。
その一番身近な物件が、僕にとっては“大衆酒場”なんじゃないか?という結論に達したわけです。

「ディズニーランドは夢の国」と言って出かけて行く遊園地ファンの方と、心理的にはなんら変わりはない!


ずいぶんハードルが上がってしまった気もしますが、今回はそんな楽しみを味わえる空間、そしてお店についてご紹介出来ればと思います。

舞台は浅草。
日本を代表する観光地ですが、ちょっとした異世界への入り口が老舗デパート「松屋」さんの目の前にあります。




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地下鉄銀座線 入口



看板に“浅草地下街”とあり、たくさんお店の名前が書いてありますね。
ここを降りていくと、




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こんな世界が



広がっています。

時代に取り残されたような怪しい地下街。




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可愛らしい椅子の中華屋



やタイ料理屋、立ち食い蕎麦屋、喫茶店、気功術、古物屋…、とにかく謎のパワーに溢れたこの光景、一見の価値ありだと思います。

「あれ?さっきまで雷門とか、スカイツリーとか、アサヒビールのウンチみたいなオブジェとか、俺そういうとこにいたよね?」と、狂った磁場によって、どこか異世界迷い込まされてしまった感じ。

700円のカット専門店




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カットセブン



では、




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女性はショートのみ!



受け付けられてるそうですので女性の皆さんはご注意を。
四年生以下のお子さんもね。

お!




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ぜんまいじかけで歩く クワガタ・カブトムシ



が200円か。

ん?こっちは、




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アルカリ電池、家具転倒防止シート、マルチドライバー、けん玉



どれも安いなー。

あ!雑に仕切られたスペースに、




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官能・エロス



発見!3枚2,000円かー。




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松屋の看板



の周囲であろうと、容赦なくこのテイストをキープ

そんなに広い地下街ではないのですが、色々と楽しいものが発見出来てワクワクします。

でですね、ここは最終的に、




0702_10.jpg
地下鉄銀座線の改札



へと通じるわけですが、そこから振り返って見ると、




0702_11.jpg
やっぱりこんな風景



左手にいい味出してそうなお店がありますね。
そう「福ちゃん」さんです!

ここに行ってみましょうよ。




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カウンター



と小さなテーブルが数席。
空いている席に腰掛けて、見上げると、




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ズラーッ



外の看板には「浅草やきそば 福ちゃん」とあるんですが、他にも色々あるし、お酒もつまみも豊富で、十分に飲めるお店ですよ!

メインは、ソース焼きそば(350円)カレーソース焼きそば(450円)牛スジ焼きそば(500円)、ラーメン(450円)、チャーシューメン(650円)、ニンニクラーメン(600円)、カレーライス(450円)ぶためし・スープ付き(550円)
どれも食べてみたいし、何しろ安いですねー。
季節モノの冷やし中華が750円とここでは最高級品のようで、隣の方が頼んでましたが具沢山でかなりうまそうでした。
おつまみも、冷奴(200円)牛スジ煮込(400円)まで、けっこう種類があって嬉しいです。
お酒もビールにホッピー、サワー系、焼酎など、色々ありますよ。

まずはオリジナルジョッキが嬉しい




0702_14.jpg
生ビール(400円)



とかく観光地価格になりがちな浅草の一等地で、この立派な生が400円
これって実はけっこうすごいことだと思うんですよね。

で、おつまみの中からこちらをチョイス。




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タンみそ漬(400円)



ハツも同じ値段でありましたが今日はこちらを。

適度にサックリとした歯応えは残しつつ熟成感もあり、味噌の風味がたまらないですねー。
しょっぱすぎるってこともなくてちょうどいい味加減。
これはバッチリなつまみだ!




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もつ煮込(370円)



は味噌ベースのあっさり味。
臭みなく柔らかく煮込まれたモツにほっこりします。
そしてたっぷり入った大根!
あまり細かくは切ってないので、歯応えを感じながらかじると、大根の甘味と共にじんわりと煮込みの風味が染み出して来ます。
しみじみするなー。

ではそろそろメインを頼みますね。
久々の浅草だし、今日は奮発して豪華にいっちゃうか!




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牛スジ焼きそば(500円)×目玉焼トッピング(100円)!



まーこれでも600円なんですが。

それはそうと見て下さい、この芸術的なまでの目玉焼の焼き加減、これぞ巧の技!
もうね、黄身を割らずに永遠に眺めていたい気分ですよ…。




0702_18.jpg
すぐ割るんですけどね!



目玉焼のトロけた黄身って、何にでも絡めたくなりますけど、今はこいつしか考えられない!

プリプリとした、焼きそばにしてはちょっと太めの、中太麺っていうんでしょうか。
それを若干甘めながらしつこさのないソースで味付けし、横にはたっぷりの紅ショウガ。
さらにさらに、プレーンとの差150円だけあって、牛スジ肉がゴロゴロ!

たまんね〜よ〜。

しかしみなさん、僕の食に対する卑しさはもうご存知ですよね?
これだけでは終われないですよ。
もう十分な味のハーモニーを醸し出しているこのプレートに、カウンター上のアレを投入させて頂きます!

アレって何かって?
はは、バカだなぁ、マヨネーズに決まってるじゃないですか。




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イケナイコトカイ?



甘味、酸味、辛味、まろみ、スジ肉の旨味、黄身のコク、白身と麺と肉とショウガの食感…!
一体どれだけの要素を絡めてハーモニーを作り上げようというんでしょうか!
もちろん食べてる時にそんなこと考えてませんから、そう、ただただ幸福!ただの幸福!




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グレープフルーツサワー(350円)



によるハーモニーも追加して、キレイさっぱり堪能させて頂きましたとさ。


いや〜それにしても、改札の真横にこんな天国がある地下鉄銀座線浅草駅を毎日ご利用の皆様は、とてつもない精神力を要求されますよね。
毎日が福ちゃんに吸い込まれるか、それともなんとか持ちこたえるかの戦いなわけですから。
心無しか改札を通る皆さん、何かに抗っているような、自暴自棄になり果てているような、複雑な表情をしていたように感じます。
少し泣いていたかもしれません。


というわけで、楽しい地下街と素敵なお店福ちゃん。
浅草観光に行かれる方は、ホッピー通りもいいですが、たまには目先を変えてこんなお店もいかがでしょうか!?


ではー。





より大きな地図で パリッコの「大衆酒場ベスト1000」 を表示

浅草 福ちゃん ふくちゃん - 浅草/焼きそば [食べログ]




告知

2013年7月26日(金)
よよぎゆるふぇす
代々木Zher the ZOO YOYOGI

開場時間 / 24:00
開演時間 / 24:30
当日料金 / 2,000円(飲食代予算会費として)

出演 /
 みやのゆうた
 小島ユウスケ
 福永健人
 倉品翔
 青沼詩郎

DJ /
 浅野俊介
 YASUSHI
 パリッコ
 手島将彦
 タシロック
 マキト



2013年7月7日(日)
HOUNDS HOUR
新宿 BE-WAVE

開催時間 / 17:00〜23:00
当日料金 / 1,500円(1ドリンク)

DJ /
 ANiIIIIiiiKii
 チミドロ
 パリッコ
 fantaholic
 TOYOPEE(In The Pacific/FABULOUS PARADE)
 TARO THE SPIT FIRE(FABULOUS PARADE)
 hara(Ci/sunset)
 Kentaro Marume
 Suzuki(Club Heaven)
 Black and Ginger Cats




























posted by パリッコ at 10:24 | Comment(0) | 第76回〜第100回
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