大衆酒場ベスト1000

2013年08月16日

第89回「岸田屋(月島)/牛にこみ」

ついに始動!パリッコの名店巡りシリーズ!

以前、連載第63回で「酒場 野田」さんを取り上げた際に触れたんですが、僕は基本的に好き勝手に自分の行動範囲にあるお店に行ってるだけなので、“東京の下町エリアにあんまり行ったことがない”“名店と呼ばれる有名な酒場にあんまり行ったことがない”というのが、割とコンプレックスなんですよ。

いや、別に本来コンプレックスに感じることでもないんですけど、偉そうに「ここのこれがおすすめです!」とか、毎度毎度書き連ねてるわけなんで、さすがにほら…。

ところで、先日誕生日を迎えまして、早いもんで35歳になりました。
35歳!四捨五入すると40歳ですよ!
まぁ四捨五入する必要は全く無いわけですが。

とにかくそんな誕生日も近い週末のとある1日、今日は夫婦でなんかうまいもんでも食いに行くか、となったんですね。
で、僕が行きたいところがいいんじゃないか、と妻に提案してもらい、通常こういった場合、ちょっと気の効いたフレンチやらイタリアンなど、普段あまり行かないようなお店をチョイスするもんだと思うんですが、僕はこう即答してしまったんです。

「東京三大煮込みが食いたい!」

と。

東京三大煮込み、これは大尊敬する居酒屋研究家、太田和彦先生がその著書で提唱したもので、千住の「大はし」森下の「山利喜」月島の「岸田屋」の3店の煮込みを指します。

まだ1つも行ったことないんですが、本、TV、インターネットなどのメディアに登場することも多い有名店、ずっと憧れ、いつか食べてみたいなぁと思っていたんですよ。

今回はその中から、感覚的に一番惹かれたという理由で「岸田屋」さんに行ってみることにしました!


はい、さっそく月島に向かいます。
東京メトロ有楽町線の月島駅、昨今の各線相互乗り入れにより大変便利になったもので、我が家の最寄りである西武池袋線大泉学園駅から、なんと乗り換えなしで着いてしまいました。
1時間弱とまぁまぁ時間はかかってしまうんですが、それでももっと気軽に来れるなぁ、と出だしから嬉しい発見。

月島はご存知の通り、アーケード街の左右にズラーッともんじゃ屋が立ち並ぶ、外人さんも大喜びの一大観光タウン。
ですが1本横道に入ると、古い長屋風家屋の前に植木が所狭しと置かれ、打ち水がしてあるような、ザ・下町的風景が普通に広がっています。




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猫が似合う街



岸田屋のオープンは17時ですが、日本屈指の有名店のこと、開店前は行列必至だそうです。
普段はあんまり気が進まない僕ですが、今日はもうそこに合わせてコンセントレーションを高めて来たので並ぶ気もバッチリ。
15時すぎに月島に到着し、街中をのんびり散策しながら目的地方面に向かってみます。

しばらくするとシャッターの完全に下りた岸田屋を発見。
開店1時間半前ですが、なんとすでに男性が1人、お店の前にポツンと立っておられました。
いやでも、なんにも知らなくて、ただ暑いから日陰のそこに立ってる人かもしれないし、と思って「並んでらっしゃるんですか?」と伺うと、「えぇ」とのお答え。
恐るべし岸田屋です!

僕らはちょっと余裕をこき、あと2、30分くらいはフラフラして戻って来ても大丈夫だろうと、1つ寄り道。
近所の路面店「げんき」さんで、串モツの煮込みと持ち込みOKの缶ビールで乾杯させて頂きます。




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路地裏の名店



ここ、「アド街ック天国」とかそういう番組にもよく取り上げられるお店だそうで、実際フワフワの脂が残された牛モツの煮込みが驚くほど絶品!

またシチュエーションが最高で、さっきの写真のような路地の中に何気なく、静かに佇んでいるんですよ。
なんなんでしょう?うちの地元を探したって、こんな映画のセットのような物件、1つも見当たりませんよ?
怖いわ〜、月島。
良すぎて逆に怖い。
これがエリート下町の実力か!

もうここで1記事書けるくらいに最高だったんですが、滞在が短かったんで、また今度伺って、機会があればあらためてご紹介したいと思います。

さて、そろそろ16時なんで、再び岸田屋の様子を見に行ってみましょう。

お!お店の前に木製の丸イスが約10個、綺麗に並べられ、すでに開店待ちが4人になってるじゃないですか!
慌てて椅子を確保します。

開店までは1時間、長い戦いになりそうですが、最初から覚悟していたこともあって辛さは皆無。
むしろお店周りのシチュエーションがこれまた良いわ、運良く風があって過ごしやすいわで、何時間だってここに座っていられそうな気分です。

だってだって、待ち席から眺める風景、




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こんなん



ですよ!

細い路地を着物のご婦人が通り過ぎ、道端にはやっぱり植木と猫ちゃん。
もう“下町”自体が意思を持ち、総力を挙げて練馬っ子の僕をバカにしてるのかと疑いたくなるほどに完成された絵面です。

あ、ちなみにご近所さんによると、これは岸田屋さんの猫ちゃんだそうです。

ともあれこの快適な空間で、先ほどのげんきで飲み切れなかった緑茶割りを控えめに頂きながら、




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※読者の方にあまりおすすめは出来ません



読書などしていると、にわかにお店の周囲が活気付いて来ました。

表から裏口、裏口から表へと忙しく行き来する店員さんがみんな、待ち客の列に「お待たせしてすみませんね〜。もうすぐ開きますからね。」と毎回のように声をかけて下さり、この時点ですでに、有名店ということにあぐらをかいた態度がでかいだけの店じゃないことが120%判明してしまいます。
同時に期待値もグングンアップ。

そしていよいよ開店時間、ゾロゾロと列が店内へ。

コの字カウンターを中心に、壁際にも小さな席がいくつか、詰めて詰めて、今日はなんとか並んでいた方々全員が入れたようですが、身動きをとるにも若干苦労するような窮屈さですね。

しかしながら、




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年季の入りすぎた壁や天井



さらに、飲兵衛たちがその手で長年研磨し続けた結果、美しく面取りされた




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カウンター板



などを前にすると、まったく不快さはありません。
むしろ快適。
いるだけで幸福。

なのにここ、




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ビールまで飲めちゃう



んだから、そう、つまり天国。

はい、まずは瓶ビール大(630円)をゴクリと。
すぐに一緒に頼んでおいたアレがやって来ました。

そうです!いきなりのご対面です!




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東京三大煮込み!



その一角を担う、岸田屋の牛にこみ(480円)

甘め濃いめの味噌味でこっくりと、数種類のモツを一緒に煮込んでありますね。
シロやフワ、胃袋っぽい部位も見て取れます。
全てがトロトロ、なんだけどちゃんとそれぞれの食感は残ってます。

これら多彩なモツから濃厚な出汁が染み出しており、意外なことに若干の獣臭も感じます。
驚くほど薄く切られた瑞々しいネギがそこをカバー、かつ全体をまとめあげ、うん、確かにこれはクセになる煮込みだ。

そして何よりも、岸田屋という歴史の積み重ねそのものを頂いているような、重みある1皿です。

食ったぞ〜!
三大煮込み!(のうちの1つ!)

ところでこちらも入店と同時に頼んでおいた、




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肉どうふ(650円)



これがさらに僕好みで参っちゃいましたよ。
写真だとわかりづらいですが、すき焼き風の甘辛味で仕上げられた牛肉と、ザクザク感の残るネギ、これらの味がよく染み込んだ大き目の豆腐が、下に隠れています。

深みがあるんだけどインパクトがあり、次に岸田屋に来たらまずこっちを頼んで様子を見てしまうかもしれない、というくらい気に入ってしまいましたね。

以上の料理たちがかなり重量級であり、途中で追加したのは、




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レモンハイ(420円)



一飲みごとに口の中がリセットされる、まことに美しい組み合わせです。

ここらでやっと、それ以外のメニューに目を向けていきましょう。
煮込みがあまりにも有名とはいえ、外も全てハイレベルなのがこちらのすごいところ。
特に魚系には絶品料理が多いようで。




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ぬた(450円)



どう見たって間違いないでしょ…。
この価格にして驚愕のクオリティ!
ネギとワカメをベースにしながらも、そのベースが見えなくなってしまうほどに盛られた魚介類。
この日は、鳥貝、小柱、イイダコ、イカ、でしょうかね。
どれも一目でわかる新鮮さです。

またこの味噌が絶品で、酸味を若干抑え、甘味と、醤油っぽいとでもいうような味噌の風味を立たせてあり、オリジナリティ抜群。
ぬたというとあの甘酸っぱい酢味噌が苦手という人もいるかもしれませんが、そういう方にこそ一度試してみて欲しいぬたですね。
個人的にはこれを当記事の一押しにしたいくらいでしたが、今回は三大煮込みに敬意を評してみました。




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あなご白焼(600円)



フワフワに焼き上げられた穴子。
塩か醤油、そこに山葵を加えてシンプルに頂きますが、身と脂にはなんともいえない甘味があり、皮目は香ばしい!
そして何よりも大変上品で、こういうものを頂けることこそが、35歳くらいのまだまだ若造の自分にとって、真の贅沢と感じますねー。

おっとそうそう、こんなものが次々出て来てしまっては、こっちに移行しないとですよね。




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清酒 菊正(360円)



お燗で。
たまらん。




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お新香(350円)



も追加。
見惚れるほどに美しいですね〜。
爽やかな酸味がすごくいいです。
赤と黄色のパプリカがまたニクい!

さて、そろそろこのあたりで締めればバッチリといった感じなんですが、どうしても自分が気になってしまって、ここに来てまだ頼んでしまったものがもう1つ。
それが、




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鮭ハラス焼(350円)



この値段でプリップリのハラスが半身分丸々と、お得すぎる1品なんですが、これは岸田屋さんが悪いのではなく、僕が完全にタイミングを間違えてしまいましたね。
というのもただでさえ煮込み、肉豆腐と重量級のやつらをやっつけているので、したたるほどに脂の乗ったこれを食べきるのにはちょっと難儀しました。
素材も焼き方も完璧すぎる鮭ハラス、次は序盤に頼もうっと!

岸田屋は、はまつゆ(ハマグリのつゆ)や各種魚の煮付けなど、他にも名物がたくさんあり、加えてレギュラーメニュー以外の季節モノも要チェックだそうで、また並んででも行きたいと思える、流石の名店でした!


以上、私の初三大煮込み初体験レポートは終了。

多くの先人たちが様々な切り口で紹介しているこういった有名店の数々は、今更僕ごときが紹介してもあんまり面白くないと思うんで、今後ちょくちょくこの連載に登場するってことはないと思います。

ただ自分の興味のためにも、これからも地道に少しずつ名店に足を運んでみようかな〜と思いました。なんといっても、岸田屋さんが最高すぎたのでね。

というわけで、こんな風に書き残しておきたいお店に出会った時にはまたお付き合い下さい〜!
では。





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岸田屋 きしだや - 月島/居酒屋 [食べログ]




告知

2013年9月1日(日)
LBTプレゼンツ「バック・トゥ・ザ・サマー」
池袋 knot

開催時間 / 17:30
当日料金 / 2,000円(2ドリンク)
フライヤー画像ありの料金 / 1,500円(1ドリンク)

Live /
 HONDALADY
 nakayoshi group
 嫁入りランド
 鼓膜シュレッダー

DJ /
 Maesaka (BootyTune)
 showgunn
 hara (from HyperJuice)
 Kenji Maeda
 DJイオ
 パリッコ



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クラブDJストーム(1)
¥800(税込)
A5判・計126ページ
2013年8月18日 COMITIAにて発売
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posted by パリッコ at 11:00 | Comment(2) | 第76回〜第100回
この記事へのコメント
パリッコ様
当日居合わせた岸田屋ファンです。
たまたま「岸田屋」でググったらこちらに辿り着き、自分が写っている(モザイクかけて頂いておりますがバッチリ分かりました)のに驚きながらもこの偶然を面白く思い反射的に書き込ませて頂きました。
記事と画像を拝見しましたが今直ぐ岸田屋に飛んで行って飲み食いしたくなりました。
乱筆乱文で失礼します。
Posted by ダークブルーのキャップかぶったオヤジ at 2013年09月22日 20:42
>ダークブルーさま

わわ、こんなことあるんですね!
勝手にお写真をすみません…。
書き込み頂いてめちゃくちゃ嬉しいです!
ありがとうございます。
岸田屋さん、本当に行って良かった名居酒屋ですね。
またお邪魔します!
Posted by パリッコ at 2013年10月04日 10:14
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