「今夜は無性にイカが食べたい気分…」そんな日は迷わずここ!
前回、前々回と、身に余る大御所の方々と酒席を共にさせて頂き、正直どう書いてもなんだか自慢話みたいになってしまいそうで、実は心中穏やかではなかったんです。
読者のみなさまの中にも「てめーごときが生意気だぞ、このチンチクリンのヒヨッコが!恥を知れ!」と思われた方が大勢いらっしゃることでしょう。
その気持ち、わかります。
そうだ、こんな時は1人で飲みに行こう。
なるべく渋い店がいいな。
酒と自分、1対1で向き合い、“酒を飲むということ”の原点を見つめ直そう。
つまみも、油物とか肉とかではなく、シンプルで慎ましい食材がいいな。
イカ…とかどうだろう?
うん、イカ、喧噪とハイテンションな食物との日々をニュートラルに戻すのに実にぴったりじゃないか。
これしかない!
そんな一人芝居を終え、心中すでに楽しみの方が大きくなって、いそいそと向かうのは、JRの荻窪駅近くにある立ち飲み屋「やきや」さんです。
始めに言っておきますが、この店、すごいです!
何がすごいって、立ち飲み屋なんですが、メニューの多くを“イカ料理”が占めています。
で、その大半の価格が、なんと170円!
170円ですよ?分割すると、100円玉1つと50円玉1つと10円玉2つ。
大概の方なら今この瞬間、それくらいお財布に入ってるんじゃないですか?
この4枚の小銭で手に入れられるもの、それが、超〜絶品なイカ料理の数々なんです!
まぁ読み進めて頂ければ自動的にそのすごさが伝わっていくと思うんで、とっとと話を進めましょう。
やきやがあるのは、バスターミナルなどがあってにぎやかな雰囲気の北口とは対照的に、こじんまりとした商店街を要する南口。
そこを2、30秒も進んで小道を左に入るとすぐに見つかります。
とある土曜日の15時45分。
やきやのオープンは16時なんですが、すでに数名ファンの方々が列を作っております。
ここ、本当に人気店でして、オープンと同時にそう広くない店内はお客さんで一杯になってしまうんですよね。
カウンターのみでキャパシティは20名くらいでしょうか?
一番奥にテーブル的なスペースがあってここで4、5人くらいまでのグループにも対応していますが、基本的には横並びのカウンターが大部分。
お店の特性上長っ尻のお客さんは少ないので、タイミングによってはスッと入れることもありますし、「そんなに混むのかぁ…」と思わず、是非トライしてみて下さいね。
店内の様子は

こんな感じ。
落ち着いた色味の木の壁と、黒い1枚カウンター。
天井には市松模様の装飾があったり、シックで大人っぽい、そして大変清潔なお店です。
実はこちら、以前は荻窪駅の北口にあり、その頃は大変趣のある大衆的立ち飲み屋そのものって雰囲気だったようです。
僕は残念ながらその頃に伺ったことはないんですが。
一度お店を閉め、ファンの期待に応えて2011年にリニューアルオープンしたのがこちらというわけで、どうりで綺麗でかっこいいわけだぜ!
ちなみにここよりイカ以外のメニューの種類が多い系列店が、中野にもあるようです。
さぁ、この日はさすがにすんなりとカウンターに場所を確保出来ました。
まずはお馴染みの

ホッピーセット(320円)
を頂きまして、本日のイカメニューの吟味に入りましょう。
レギュラーメニューは20品。
そのうちイカメニューは11品。
イカ以外はというと、冷奴(170円)、漬物(170円)、みそきゅうり(170円)などの箸休め的な品が並び、珍しいところだとしめさば(330円)、うなぎきも焼(170円)、きざみ穴子(170円)など。
イカ関連の11品は、せっかくなんで全部書き出しましょうね。
いか刺身(170円)
いかみみ刺身(170円)
いかみみ焼(170円)
いかげそ焼(170円)
げそ揚げ(170円)
げそわさ(170円)
いかなんこつ焼(170円)
珍味わたあえ(170円)
自家製塩辛(170円)
いか納豆(170円)
いかしょうが棒(200円)
はい、これで全部。
どうです?たまんないでしょう!? そして、信じらんないでしょう!?
1ヶ月毎日来たって飽きが来ない。
いやむしろ、やきやで一生を終えることすら可能!
とまで思わせてしまう魅惑のラインナップです。
まずこの中でたった1品だけ、僕が毎回絶対に、それも最初に頼むものがあります。
それが…

珍味わたあえ(170円)
茹でたイカゲソを甘めに味付けたワタで和えてあり、超〜濃〜厚!
もうね、コク!コクのモンスター!
「あれ?コクってなんだっけ?ど忘れしちゃったぞ?」なんて時は、これを食せば一発ですよ。
酒好き仕様に濃いめに仕上げられており、適度な歯応えもたまらず、この170円でどれだけお酒を進ませる気なんですかね、全く。

いかなんこつ焼(170円)
焼き物から今日はこちらをチョイスしてみました。
コリッとプリッが混ざり合う魅惑の食感と、女将さんの絶妙な焼き加減による香ばしさ。
そして何よりイカ本来の旨味の濃いこと!
あ、そうそう、ここの女将さんがですね、いつでもピシーッと御髪を整え、着物に身を包み、焼き場とまな板を行ったり来たりしながら、ひっきりなしの注文を寡黙かつ丁寧にこなされているんですね。
その存在が店に気品を加えていることは間違いありません。
ただ、注文を伝えてもお返事を頂けないことも多いんです。
初めての方はここで一瞬躊躇してしまうと思うんですが、心配はいりませんので。
秒単位の焼き加減と向き合っていてお返事をもらえなかった時でも、頭にはきっちり入っていて、待っていれば注文の品が出て来ます。
ちょっと怖いな、なんて思われる方もいるかもですが、稀に手が空いた時にお話をさせてもらうと、調理中の表情とは打って変わって素敵な笑顔で答えて下さり、逆に仕事に対する真摯さを感じます。

げそ揚げ(170円)
次に、今日はげそ揚げを選んでみました。
やきやの旨味の濃いイカに、しっかりと味の付いた香ばしい衣。
うまくないわけないでしょ!
なんだか冒頭の神妙なテンションから一転、楽し過ぎて完全にアッパーモードに突入して来ました。
っていうかすでに油物だしね、コレ…。
ようし、もう今日は、やきやでは贅沢品なコレもいっちゃうか!

いかしょうが棒(200円)
贅沢品と言っても200円なんですが。
細長いイカ入りさつま揚げといったもので、箸で持ち上げると重みでたわむボリューム感。
これまた香ばしくていいですね〜。
しかしかなりお腹にたまるんで、2人くらいでシェアした方がいいメニューかもしれません。
「ちょっとイカに飽きて来たな」、なんて時は、いやぶっちゃけ全然飽きては来ないんですけど、単純に「食べたいな」って感じで頼むことが多いのがこれ。

きざみ穴子(170円)
見た目に反して冷たく冷やしてあり、味付けもさっぱりとしつこさがないので、イカ料理とのルーティーンに組み込むのにバッチリです。
先ほどの写真にすでに写り込んでしまってましたが、ホッピーのナカ(価格失念)追加の後に頼んだ

酒一杯・冷(250円)
との相性が良過ぎますね!
さて、突然ですが今から僕が撮影した、世にも美しい写真をみなさまにお見せしようと思います。
どのくらい美しいかというと、そうさな、

ウユニ塩湖
とかそんくらいだと思います。
どうかウットリするほどに幻想的なその光景をご堪能下さい。
では…

いかみみ刺身(170円)
…芸術品ですねこりゃ。
同じ値段でいか刺身もありますが、僕はほんの少し歯応えの加わるこちら派。
イカ独特のネットリとした舌触りに加えて、心地良い弾力感が官能的と言って良い1皿です。
こんもりたっぷり盛られた量も嬉しく、これ、本当に170円でいいんでしょうか…。
いや〜、今日も心から満足!
夢のような時間をありがとうございました。
しかし、イカってつくづく不思議ですよね。
子供の頃は大好きでもなければ嫌いでもなかったのが、年を追うごとに年々好きになって来る。
だけど例えば、火を通した後に四角く切り出したイカの身を想像してみて下さいよ。
こんなもん、消しゴムと大差ないじゃないですか?
口に入れると、若干のサックリとした歯触りの後は終始ムッチリムッチリ。
やれシャウエッセンだ、やれ白子の天ぷらだといった、劇的な食感の変化があるわけでもない。
味だって獣肉のように突き上げて来るパワフルさがあるわけではなく、控えめで、好きな人だけが好きになって下さいね、という奥ゆかしい旨味があるばかり。
もしかしたら、イカをどれだけ好きかが、人間がどれだけ大人になったかの物差しと言えるのかもしれません。
…おっと、どうでもいいことをボソボソ語ってる場合じゃなかった!
それよりみなさま、一番最初に頼んですでに食べ終わってしまった珍味わたあえの、皿の底に残ったタレ、まさか店員さんに返しちゃったりしてないですよね!?

そう、それそれ
このイカワタの旨味がたっぷりと詰まった魅惑のタレを

いかみみ刺に絡めないでどうすんだ!
って話ですよ!
これまた新たな世界の扉が開くコラボレーション!
常連さんはこのタレ、焼き物や揚げ物などなんにでも付けて、自分好みの組み合わせを楽しんでおられます。
おすすめですよ。
というわけで今日は最後に、イカにちなんだ告知をさせて下さい。
土屋遊さんが企画、制作し、様々な分野の豪華執筆陣が参加した2冊の本「イカタコ大合戦」【たこ】【いか】に、この度参加させて頂きました!
その名の通り“たこ”と“いか”をテーマに制作され、参加者それぞれが自由な形でイカタコに関する想いをぶつけております。
僕は「大衆酒場ベスト1000」番外編としまして、今回のやきや(文章などは違います)と、たこ専門居酒屋「たこ林」さんをそれぞれ紹介させてもらいました。
全ページフルカラーで箔押し表紙の豪華仕様。
1冊ずつでも購入出来ますが、両方購入すれば紅白のめでたい感じがご利益間違いなし!
僕はすでに手に取らせて頂きましたが、はっきり言ってこんな珍本、奇本、謎の情熱に溢れた本にはそうそう出会えるもんじゃありません!
イカやタコに少しでも興味がある方は、ゲットしておいて損はないと思いますよ。
↑こちらから詳細が見れますので、ご興味ある方は是非〜。
それでは今回は、僕がこのイカタコ本用に描いておきながら、スペースの都合で使用出来なかったイラストでお別れです〜。

なかなかいいでしょ?
より大きな地図で パリッコの「大衆酒場ベスト1000」 を表示
やきや 荻窪店 立呑みやきや - 荻窪/立ち飲み居酒屋・バー [食べログ]
告知
2013年10月18日(金)
ラヴラヴ企画31「絶対安全剃刀」
下北沢 THREE
開催時間 / 18:00
開演時間 / 18:30
前売料金 / 1,500円(1ドリンク別)
当日料金 / 1,800円(1ドリンク別)
★高校生以下無料(年齢が確認できるものを持参ください。)
★遠方割引アリ(交通手段の領収書を持参ください。)
※ドリンク代別(500円)
出演 /
パリッコ(LBT)
鼓膜シュレッダー(LBT)
エイトロン+ビットロン(院長<The My Mints>)
DJ FujitaQuviokal(術ノ穴)
GAKUDAN_H1TOR1(楽団ひとり)from石巻
鉄雄(添田雄介 from MUDDY WORLD、俺はこんなもんじゃない)
やまのいゆずる
VJ / TSV(PUNSUCA)
Food / roll(とうめいロボ)
予約は各出演者または lun724(あっとまーく)hotmail.com まで
主催:ラヴラヴ企画
2013年10月26日(土)
CLUBLOVELY Vol.4
新宿 FNV
開催時間 / 24:00〜05:00
当日料金 / 2,000円
出演 /
Enjo-G
HONDALADY
LBT ← パリッコ出演
FQTQ
ミサイルチューバッカ
m1dy
KaoruChupa
オッチー
gatotsu
ポータサウンズ