大衆酒場ベスト1000

2014年01月07日

第97回「鳥もと(荻窪)/ねぎぬた」

おごそかな気持ちで“ぬた”と向き合う新年

あけましておめでとうございます。
今年も「大衆酒場ベスト1000」をよろしくお願い致します。

この年末年始、みなさまはどのように過ごされましたか?
美味しいごちそうをたらふく食べて倒れるように寝、よくわからない時間に目覚めて、目の前にある飲みかけの焼酎水割り(元お湯割り)をおもむろに飲み出す。
そんなことを繰り返されていた方も多いんじゃないかと思います。
かくいう僕もそのクチで、も〜本当にお正月って幸せですよね。

…終わっちゃったけどな!!!


ちなみに今年の僕の居酒屋初めは1月3日。

妻と新井薬師梅照院の近くある北野神社に初詣へ行きまして、その帰り、近くで昼から営業されていた「遊助」さんというお店にお邪魔しました。
「あの・・三が日の昼間っから営業しててくれて大変ありがたいんですケド。」って感じで入店すると、歴史ある街の大衆的なお蕎麦屋さんをかなりアバウトに改装したような、なかなかファンキーなお店。




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とってもかわいい猫ちゃん



が2匹、気ままに店内をうろついてるわ、途中で2階から上下スウェットでボッサボサ頭の店主さんらしき人が完全な寝起き状態で起きて来て、常連さんに「あけましておめでとうございます!」とか言われてるわ、突っ込みどころ満載なんだけど不思議と居心地の良い、魅力的なお店でした。

しかも早速、今年初のサービスで




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つくね



を頂いてしまったし、幸先の良い滑り出しに大満足。
みなさまにとっても、よい1年になるようお祈りするばかりです。


では本題へ。

ここ最近の「大衆酒場ベスト1000」、銭湯だ、イカ専門立ち飲みだ、東京大学だ、100円均一居酒屋だと、ちょっと大ネタが続きすぎな感がありますよね。
おかげで「次はどんな変わり種を紹介してくれるんだ!? ホラ!早く早く!」なんて思われる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし年も変わったところであらためて確認しますが、この連載は、僕が気の向くままに酒を飲む中で出会った居酒屋さんについて、徒然に書き留めておくことが目的の“酒日記”であるわけです。
そこで今回は原点に立ち返りまして、僕がごく自然〜に通っている、真っ当〜に安くてうまい、しみじみ〜と良いお店をご紹介したいと思います。

イチオシメニューも、連載史上最高に地味かもしれない“ねぎぬた”でどうだ!?


さて、2009年より前に荻窪駅の北口を利用したことのある方なら覚えていらっしゃるんじゃないでしょうか?
改札を抜け、北口のバスターミナルへと続く階段を上ってゆくと、すぐに美味しそうな焼鳥の香りが漂い始める。
一段上るごとにそれは強くなってゆき、地上へ出る頃にはもうマックス!
右手を見ると簡素な店構えの半屋台的な焼鳥屋からもうもうと煙が立ち上り、そのタレの焼け焦げるたまらない匂いにそのまま吸い込まれてしまいそうになる、そんな風景を。
そう、その焼鳥屋こそが今回ご紹介する「鳥もと」さんです。

創業はなんと昭和27年。
残念ながら2009年にそちらの旧本店を閉めるまで57年もの間、荻窪駅を利用する飲ん兵衛たちを誘惑し続けて来た、由緒正しき大衆酒場なんですね。
ちょっとネットで調べてみたところ、かの文豪、井伏鱒二先生もひいきにされていたそうです。
歴史が違う!

僕も何度かお邪魔したことがあったんですが、今ほど熱心にカメラを持ち歩く習慣もなかったので、1枚の写真も残っておりませんでした。
昔の自分のバカ!
代わりに、さっき見つけた「Saturnalia with HotRod Devil Ducky.」というブログに、こんな記事があったのでリンクを貼らせて頂きましょう。
貴重な鳥もとの旧店舗、最終営業日の様子だそうです。
この1枚の写真を見ても、たくさんの人から愛されていたお店だったことがわかりますよね。

現在は荻窪駅北口にて、出口の横とはいかないまでもかなり駅から近い範囲で、移転して再開した本店と2号店の2店舗で営業されておりまして、このどちらも僕は大好きです。
そこで今回は、本店、2号店、この両方を「鳥もと」とくくって紹介していければと思います。


ではでは、まずは本店へ行ってみましょう。




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鳥もと 本店



綺麗になりましたね〜(泣)

以前の味のある店舗は大変魅力的でしたが、こうしてリニューアルオープンし、ここからまた何十年と歴史を重ねていくのだと思えば、ファンにとっては喜ばしく、また楽しみなことであります。




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内装



もまだピカピカですが、きちんと大衆感のある作りになっており、居心地は抜群。

ところでこちら、そんなことよりも誰もが真っ先になるのが、大将のキャラクターだと思うんです。
パンチパーマにメガネ、ヒゲ、見た目は完全にアッチ系。
そのお方が、日本で5本の指に入るんじゃないか?ってダミ声でもって、ひっきりなしに何か喋り続けてるんですよね。
心臓の弱い方は最初、その声の大きさも手伝って、ギクッとするかもしれません。
でもご安心あれ、その内容をよく聞いてみれば、店内のお客さん全てを視界に入れ、何か頼みたそうだと思えば声をかけ、変わったメニューがあれば提供とともに説明を入れて下さり、そして店員さんたちには的確な指示を出す。
そう、超〜親切でいい人なんです!
いったんハマると、このキャラクターに会うためだけにここに行ってもいいとさえ思えますよ。
まぁ「酒は静かに、無音で飲みたい」なんて方には完全に不向きですが。

で、この本店、大将とご兄弟の2人で仕切られているそうなんですが、北海道の出身らしく、東京の他店ではなかなかお目にかかれないような新鮮で珍しい魚介類が充実してるんですよね。
焼鳥屋なのに!

まずは




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シラスおろし(250円)とレモンサワー(350円)



あたりからスタートして、じっくりとその日のメニューを吟味します。
あ、ジョッキに書いてあるのがそのご兄弟の似顔絵ね!
めちゃくちゃ似てますw

で、「北海道白糠直送 新鮮な魚介類」と記された日替りメニュー、かなり見応えがありますよ。

刺身のコーナーには、幻の鮭「鮭児」(2枚 600円)幻 ぶどう海老 オス(2,000円)メス 卵入(2,500円)、なんて、おいそれとは頼めそうもない高級品から、マツワカレイ(800円)真いか(600円)アオソイ(700円)、と魅惑的なラインナップが並びます。
他にも、ツボ鯛干物 半身(1,300円)釜あげこうなご(250円)たらザンギ(400円)本ししゃも串焼 2尾(500円)本ししゃも天ぷら 2尾(500円)等々、どれも味わってみたい。
さらに珍しいところで、ぼりぼり(ならたけ)おろし(300円)(“ぼりぼり”というのは北海道などでのナラタケの呼び名だそうです)、銀皮(砂肝皮)白ワイン煮(250円)なんてのもおもしろそうだな。

それらの中からこの日僕が選んだのが、




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宗八カレイ素揚げ 小(300円)



小と言ってもこのボリューム感!
皮までパリパリと香ばしく揚がっており、身は肉厚でふっくら。
たまんねーっす。




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ほっけ 飯寿し(250円)



飯寿司(いずし)とは、主に魚を塩と米で乳酸発酵させた、あの有名な鮒寿司に代表される“なれずし”の一種。
何年も経って原型すらとどめずドロドロになった鮒寿司なんかは、はっきり言って食べるのにちょっと勇気がいりますが、こちらは熟成期間も短く、比較的どなたでも抵抗無く口に運ぶことができると思います。
野菜が入るのも特徴だそうで、それが歯応えにアクセントを加え、それから米由来のふくよかな甘味と、清々しい酸味、何より、北海道直送のほっけの適度に締まった身に旨味が染み渡り、ちょっとすごいレベルのおつまみですよ、これは!
ほっけは皮目が残してあって、それがまたいい〜歯応えなんですよね。
「ちょっと醤油を垂らした方が美味しいかもしれません」なんて店員さんに言われ、やってみるとこれがまた合う。
いつもあるメニューではないと思うんですが、是非お試し頂きたい1品です。

あ、ちなみに、レモンサワーじゃもったいないと合わせたのが、オリジナルの日本酒「山手」の大(550円)
こちらでは、燗酒、常温、冷酒用などで銘柄を分けてあり、山手は冷酒用。
このあたりにもこだわりがあるんでしょうねぇ。
至福のハーモニーを堪能しました。


お次は2号店に向かってみましょう!

北口の線路沿いにあり、本店とも目と鼻の先。
明るいうちからビールケース製の席でワイワイと盛り上がるお客さんの様子が外からも見え、より敷居が低いのはこっちでしょうか。
本店のようにクセのある接客でもなく、まずは味と雰囲気を味わいたいって方には2号店がおすすめかな。




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安心感のある眺め



たぶん本店とはメニューも若干違って、種類も多いのかな?
こちらもこちらで日替りメニューに目移りしてしまいます。
ストイックに「魚!」という印象の本店に対し、僕が伺った日だと例えば、マグロとアボガドのタルタルあん(480円)ソフトシェルクラブ唐揚げ(480円)タルタルいわし(380円)なんて、お酒に合いそうな一品料理を色々と揃えてくれている感じ。

特に前食べたこれなんてたまんなかったなー。




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カキ大葉つつみ揚げ(380円)



見て下さいよ!
一般的なシソの葉っぱの大きさから考えて、見るからに大ぶりな牡蠣が3つ!
うま〜いこと衣を付けて芸術的に揚げてあり、さらに塩まで添えよってからに!
サクッとした後にプリッと来て、牡蠣の旨味がジュワっと広がり、最後にほんの〜りシソの爽やかさが加わって…、ひぃ〜思い出しただけでめまいがしそうです!
これが380円
もう尊敬しちゃいますわ。

それではいよいよ“ねぎぬた”の話に参りましょう。
これが僕は本当に大好きでしてね〜。




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ねぎぬた(250円)



ご覧下さいこの、ねぎぬたとしか言い様のないルックス!

ぬたって言うと真っ先にマグロが思い浮かんだり、またこんな豪華なぬただってこの世には存在するんですが、このねぎぬたは他の追随を許さないシンプルさ。
これがいいんですよ。

“ぬた”って、子供が喜びそうにない料理のかなり上位に入りますよね。
もしかしたら1位も夢じゃない?
酢味噌特有の、甘くて酸っぱくてしょっぱい、どこか判然としない味。
これが、カレー!ラーメン!ハンバーグ!といったわかりやすいお子様人気食品と対極にあると言えます。

そもそも自分もいつから、ぬたを好んで食べるようになったのかイマイチ覚えてなくて、例えば子供の頃嫌いだったけど克服した食材に“しいたけ”“ナス”“ワサビ”などがありますが、それらの「あ、最近これ食べられるようになって来たかも…」っていう段階における記憶みたいなもんが全然無いんですよね。

子供の頃は全く惹かれるところのなかったぬたが、いつからか魅力的に見えていた。
不思議な存在だぜ、ぬた!

そんな“ぬた界”の中でもとびきりストイックな鳥もとのネギぬた。
湯通ししてトロトロになりかけた周囲と、シャキシャキ感を残した中心部。
それらを一体にまとめあげつつ、子供には理解出来ないあの渋い味わいにコーティングする酢味噌。

一見箸休めに役立ちそうな1皿ですが、僕はこの鳥もとのねぎぬた、何故か極力シンプルに楽しみたいと思ってしまうんですよね。




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ぬた、酒、以上。



まずはここから始め、いよいよその日注文するものを決めてゆく。
対峙する者をどこか敬虔な気持ちにさせてくれる、そんな風格が、このぬたにはある気がします。

ってなわけで、新年一発目にはちょうど良かったんじゃないでしょうか?
あらためて自らの原点に立ち返り、おごそかな気持ちで酒との関係を見つめ直す。

…書いていて、そんなに大げさなもんか?って気持ちが湧いて来ないでもないので、そろそろこのあたりで。


あ、そうそう、鳥もとは焼鳥屋さんなのに全然串のことに触れずにすみません。
ついつい色々紹介したいものがありすぎて!




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串の写真


だけ、何故かうまそうに撮れてるのが少ないという理由もあるんですが、これは僕の腕の問題で、何を頼んでも安くて美味しいので!
機会のある方は是非ご自身で確認してみて下さい〜。





より大きな地図で パリッコの「大衆酒場ベスト1000」 を表示

炭火焼きの鳥もと




告知

2014年1月10日(金)
パリ、手賀沼、杉並…そして深夜
高円寺 スタジオドム

開場時間 / 24:00
当日料金 / 1,500円

※ドリンク持込自由です

Live /
 Alek et Les Japonaises
 碧衣スイミング
 Count the Hoo-Hoo
 チミドロ
 nakayoshi group
 NATURE DANGER GANG
 nezi-maki sound system
 ばきりノす
 Have a Nice Day!
 folklore kitchen
 やまのいゆずる

DJ /
 カシミールナポレオンK
 DJ 勇気(有機)a.k.a インゲル(FALSETTOS)
 パリッコ(LBT)
 フレネシ
 ほうのきかずなり
 ride on pony + DJ happening bar(Have a Nice Day!)

Food / 一号生筆頭(痛風亭/臓器提供フェア)

宇宙マッサージ / プリミ恥部



2014年2月13日(木)
キンミヤナイト!
四谷アウトブレイク!

開場時間 / 18:30
開演時間 / 19:00
当日料金 / 2,000円
前売料金 / 1,500円

出演 /
 大甲子園
 パリッコ(LBT)
 THEロカ
 廃人トニック006
 スペース☆ライダー
 SHINDY STONE























  




posted by パリッコ at 11:00 | Comment(0) | 第76回〜第100回
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