大衆酒場ベスト1000

2014年01月31日

第99回「いづみや 日暮里店(日暮里)/肉豆腐」

大宮の有名店「いづみや」の支店が日暮里にあった!

TVや雑誌、インターネットなんかで居酒屋の話題を目にすると、ついつい目をとめてしまいます。
居酒屋が大好きなもんで。

そういう中で、有名店ゆえに色んなところで紹介され、「いいなー行ってみたいなー」と思っていたお店があります。

大宮の「いづみや」さん。
地元に根付いた大衆食堂兼酒場で、メニューも佇まいも素晴らしく、映像や写真から直に活気が伝わってくるようなんですよね。
営業開始が早いのが特徴の1つらしく、まだ日も高いうちから酒飲みたちが幸せそうに飲んでいるのも印象的。
ただ大宮は自分からすると県外ですし、なかなか近くに行く用事もなく、「いずれ必ず」なんて思いながらすごしてしまってたんです。
よろしくないですね。

ところで先日、仕事絡みで日暮里駅に降りる機会があったんですが、あれ?駅前に「いずみや」という店があるじゃないですか。
看板には“日暮里店”の文字。
もしやと思って調べてみたらやっぱり!あの憧れの店の姉妹店だったんですね。
残念ながらその日はまだ営業前だったので、おとなしく帰宅。

大宮の本店は毎日10時から営業されているそうですが、こちらは平日が16時、土日が11時半からという情報をゲットしまして、せっかくだから明るいうちにと、土曜のオープンに合わせ、行って来ましたよ〜。




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憧れの店!の支店!



ここ「いづみや 日暮里店」さんは、日暮里駅目の前。
東口を降りると、駅前のバスロータリーごしに、すぐ発見できます。

いそいそと入店。
オープン直後なので先客は無し。
この日は妻に付き合ってもらって2名だったので、お座敷に座らせて頂きます。
で、あらためて店内の風景をゆっくりと堪能するわけですが、この瞬間が本当に幸せなんですよね〜。




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2列のカウンターがかっこいい!



いやぁ〜、惚れ惚れするほどに大衆酒場です。
入り口から差し込む太陽光、清潔な店内にずらりと並んだ丸イス、壁のメニュー短冊、BGMは休日昼時のTV。
なんていいんだろう。




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お座敷だってこの良さ!



しかもちょっと時間が経ってから気付いたんですが、ここに座っているとやたらポカポカと暖かいんですよね。
うん?と思って座布団の下に手を入れてみると…、あれ、この座敷、まさかの床暖!?
隣の人がいない席の床まであったかかったんで、たぶん間違いないと思います。
居酒屋は見かけによらないなぁ!

おかげで全身が緩みまくって、よけいに酒が回るってもんですよ。
いやぁ、着席しただけで、すでに幸せな店だ。

愛想の良く若々しい女将さん(実年齢は不明)に、まずは瓶ビールをお願いします。




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お、赤星



サッポロラガービール、そのマークから、通称が“赤星”。
基本的に業務用にしか流通しておらず、特にこういった渋い大衆酒場に置いてありがちな、ちょっとレアなビールで、こいつに出会うと嬉しくなってしまいます。
歴史も大変古く、1877年にサッポロビールの前身である「開拓使麦酒醸造所」によって生み出された、なんと現存する銘柄の中で日本最古のものなんだそうです。

暖かい店内でグイッと1口。
あー、たまんねー!

ちなみにグラスの下に敷いてあるチャンピオンのハンドタオルは、僕の私物というわけではなく、コースター代わりに1人1枚支給されるもの。
ちょっとした水滴なんかも拭けるし、これはなかなかいいやり方ですね。
それぞれ柄やブランドがバラバラなのも楽しいです。

壁メニューを見渡してみましょう。
先ほどのビール大ビンは、なんと470円!安い!
酎ハイが300円ウーロンハイが350円酒がコップで210円で、徳利だと450円か。

料理の最安は、焼のりの140円かな。
冷やっこ(260円)おひたし(270円)などの小鉢ものから、カキ、イカ、アジなどのフライもの(各410円)目玉焼(300円)ハムポテトサラダ(350円)まぐろぶつ(510円)などの一品ものまで、幅広いですね。

また、大概のメニューが定食に出来るようで、価格帯は、のり定食の480円から、おさしみ定食の1,150円までといった感じ。

大宮の本店より品数は少ないのかな?しかし必要にして十分といったラインナップで、大変素晴らしいと思いますね。

それではまず、大好きな大好きな、この並びの中だったら絶対に外せない、




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肉豆腐(300円)



を。

豆腐は木綿で、どーんと半丁分は入ってるでしょうか。
そして肉が豚!これは嬉しい!なにしろ豚肉好きなもんで。
上品な脂の入り方からするに、ロースあたりでしょうか?
これらをしつこすぎない、程よき出汁で煮込んであるので、肉の旨味も豆腐の風味もしっかりと感じることが出来ます。
熱々フワフワ食感の豆腐と豚肉を1枚、そしてアクセントのネギをまとめて口に運んだ時の幸せときたら!
これで300円ですから、もう大当たりも大当たり、次に行っても必ず頼むでしょうね。




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タン焼(300円)



「塩、タレ、どちらにします?」と聞かれ、「え〜っと、じゃあ…塩で」と答えたら「やっぱりタンは塩よね〜!」と、とことん気さくな女将さん。
仮にタレで頼んだとしても「タンをタレとは、通ね!」ってな感じで、どっちにしろお客さんが気持ち良くなるような言葉を返してくれるんじゃないかな、なんて疑ってしまいます。

肉の味が濃く、歯応えもしっかり。
いいつまみですね。




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酎ハイ(300円)



そしてこれですよ!

酎ハイといえば焼酎を炭酸で割った無色透明が一般的。
この美しすぎる黄金色は、いわゆる“下町酎ハイ”と呼ばれるものですね。

ちょっとその歴史を解説してみますと、まず戦後に銀座などの飲み屋さんで流行した“ハイボール”
これはウイスキーを炭酸で割ったもので、ここ数年再びブームになってますよね。
しかし当時、多くの庶民にとってはハイボールなど高嶺の花。
そこで焼酎を炭酸水で割る飲み方が広まるんですが、今よりも粗悪で、味にもクセのあった安焼酎をなんとか美味しく飲むために開発された、ちょい足し用のエキスが、天羽飲料の「天羽乃梅」
焼酎ハイボールがグッと飲みやすくなる“魔法のエキス”として広まっていったそうです。
つまり“酎ハイ”とは“焼酎版ハイボール”という意味で、酎ハイの“ハイ”はハイボールの“ハイ”なんですね。

現在でも大衆酒場を中心に、この焼酎ハイボールの元を使って作られた酎ハイは根強く残っており、それが下町酎ハイというわけ。
天羽乃梅なんて名前ですが、梅が入っているわけではなく(発売当時、以前からあった梅割り用のラベルを流用したからだそう)、なんとも説明しづらいんですが、どこまでも爽やかで、ちょっとコクも加わったような焼酎の炭酸割りという感じで、スイスイ飲めてしまいます。

立ち上る泡に太陽光が反射し、ビジュアルも抜群!
ついつい下町の歴史とロマンに想いを馳せてしまう一杯ですね。




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あじフライ(410円)



これまたお見事。
ラードの風味を感じる軽〜い油でサクッと揚げられたアジ。
フワッフワな身の大ぶりが2尾で、満足感もかなりのものです。




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松前漬(290円)



ずいぶん安いなと思ったら、数の子は入ってないんですね。

これまたちょっと調べてみたところ、江戸時代頃は数の子の親であるニシンは今よりも大量に獲れ、むしろ余ってしまうくらいで、干して保存食にするのが一般的だったほどだそうです。
そんな数の子を美味しく頂くために北海道で発祥したのが松前漬。
しかしその後ニシンの水揚げは激減し、数の子も高価な食材へと変化しました。
そんな流れで、数の子の入っていない松前漬も、それはそれで松前漬と呼ぶ、というのが定説のようです。

今回解説が多いっすね。
堅苦しくてすんません。

で、もちろん味は松前漬そのものですから、やっぱりお酒が恋しくなります。
冷酒(コップ)しぼりたて(300円)を頂きましょう。

…と、女将さんをお呼びしてお願いしたんですが、こちら、“座敷席はコップ酒ではなく徳利で頼まなければいけない”というルールがあるそうです。
「値段が倍になっちゃいますけど、どうしましょう?」
と細かい気遣いを見せて下さいます。

いやいや、そのくらいなんてことないっすよ。
床暖房代と考えればむしろ安いもんだ!




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冷酒(徳利)しぼりたて(600円)



2合徳利のフチギリギリまでお酒が満たされています。
大変嬉しいんですが、先ほどの松前漬だけだと心もとないですね。

急遽




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板わさ(300円)



を追加。

1口ごとにワサビの刺激に涙ぐみ、それを酒で緩和させながら、充実の時間を最後まで堪能させて頂きました。

大宮の本家もきっと素晴らしいんでしょうが、ゆったりとした時間の流れるここ日暮里店も、大好きな店になりました。
常連さんが1人で静かに飲んでいるかと思えば、若い女性が定食だけを注文してさっと食べて帰ったり、そのみなさんがきっとこの店を愛しているんだろうなーというのが伝わって来て、本当にいいお店だったなー。

あ、2,000円以上飲食の方には粗品を進呈してくれるらしく、帰りにこちらを頂きました。




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気遣いが泣ける!




ところで日暮里は、東京屈指の下町スポット“谷根千”エリアの最寄り駅。
休日に、いづみやと下町散策のコラボなんて最高な過ごし方も、これまたおすすめですよ!




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この先に有名な階段「夕焼けだんだん」がある






より大きな地図で パリッコの「大衆酒場ベスト1000」 を表示

いづみや - 日暮里/定食・食堂 [食べログ]




最後に告知です!

おかげ様で「大衆酒場ベスト1000」の更新回数が99回目となりました。
順調にいけば次で100回!

というわけで、記念イベント「居酒屋 パリッコ」の開催が決定しました!
パリッコが1日店主を務める、誰でも参加自由の飲み会イベントです↓


ピコピコカルチャージャパン「大衆酒場ベスト1000」連載100回達成記念イベント
 
「居酒屋 パリッコ」
 
2014年2月23日(日)
会場:はづき(京王井の頭線久我山駅南口より徒歩5分)地図
時間:17:00〜21:00
 
「大衆酒場ベスト1000」連載100回達成を記念し、
パリッコが店主を務める「居酒屋 パリッコ」が1日限定でオープンします!
 
会場は久我山駅から徒歩5分のお弁当屋(元居酒屋)さん「はづき」。
古き良き大衆酒場の面影を残す店内で、美味しい酒と肴、そして居酒屋談義を楽しみましょう!
 

システム:席料(チャージ)1,500円 ※入店後は出入り自由
 
なんと上記のチャージのみで、はづきさんの美味しい料理が食べ放題!
しかもウーロンハイ、酎ハイが飲み放題!
(色々用意しますが、無くなり次第終了となります)
 
さらに飲食物持ち込み自由!差し入れ&振る舞い酒大歓迎!
 
その他スペシャルフードも充実↓
・パリッコ特製「肉豆腐」 300円
・スズキナオ(チミドロ)プロデュース「缶ベキュー」 時価
・熱燗他、はづき特選のお酒類 時価

その他の企画
・ディスク百合おんミニステージ
・ウクレレ流し
・物販ブース有り(パリッコの本、CDなど)
・入場者にはもれなく「オリジナル居酒屋ポストカード」プレゼント!

ご注意
・お酒のイベントですが、節度を持ってお楽しみ下さい。他のお客様やお店に迷惑のかかる行為は禁止です。
・貴重品はご自身で管理して下さい。

facebookイベントページ
tweetviteイベントページ




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「はづき」さんの店内イメージ



他にも色々と企画を考え中です。
是非よろしくお願いします!




告知

2014年2月23日(日)
「居酒屋 パリッコ」
久我山 はづき(地図

開催時間 / 17:00〜21:00
当日料金 / 1,500円
 ※入店後は出入り自由

店主 / パリッコ

Food /
 はづきさんの美味しい料理が食べ放題
 ウーロンハイ、酎ハイ飲み放題
 パリッコ特製「肉豆腐」 300円
 スズキナオ(チミドロ)プロデュース「缶ベキュー」 時価
 熱燗他、はづき特選のお酒類 時価
 ※食べ放題、飲み放題は無くなり次第終了

Etc /
 ディスク百合おんミニステージ
 ウクレレ流し
 物販ブース有り(パリッコの本、CDなど)
 入場者にはもれなく「オリジナル居酒屋ポストカード」プレゼント!

 ※お酒のイベントですが、節度を持ってお楽しみ下さい。
  他のお客様やお店に迷惑のかかる行為は禁止です。

 ※貴重品はご自身で管理して下さい。



2014年3月21日(金・祝)
ピコカルプレゼンツ「熱気あふれる若者たちの殿堂」
高円寺 スタジオドム

開催時間 / 18:30〜23:00
当日料金 / 1,000円(飲み物持ち込み自由)
      Tシャツ購入の方は500円引き

ゲスト /
 FQTQ
 HOTELスカイラブ
 ヤマサキミチオ
 イアン

DJ /
 オノセタイチロウ
 タナカマコト
 ディスク百合おん
 パリッコ
 チミドロDJ(チミドロ鈴木&花井)

Food /
 BBQ(1,000円食べ放題)
 チミドロ鈴木の缶べキュー
 ※BBQは食材および炭が無くなり次第終了します
 ※缶べキューは時価になります

物販 /
 チミドロ鈴木の「早く老人になりたい」チョイス「熱気あふれる若者たちの殿堂Tシャツ」
 パリッコ「大衆酒場ベスト1000(2)」、「クラブDJストーム(1)」
 タナカマコト「BOARD GAME GUIDE 500」
 ディスク百合おん「缶バッチ」

ピコカルプレゼンツ「熱気あふれる若者たちの殿堂」























  




posted by パリッコ at 11:00 | Comment(0) | 第76回〜第100回
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