大衆酒場ベスト1000

2014年03月17日

第102回「三木松(東松原)/おでん」

世の中には、悪いお通しもあれば、良いお通しもある

居酒屋における“お通し問題”って根深いものがありますよね。
「僕は(私は)はお通し不要派だ」という酒飲みの方、けっこう多いんじゃないでしょうか。

先日NHKで【居酒屋の「お通し」 学生達が分かりやすい表示の義務づけを東京都に要請】というニュースが流れたという記事をネットで見て、そんなことをふと思いました。
関連リンク:"お通し" 大学生たちが投げかけた疑問

そもそも“お通し”の語源は、店側が客を“店に通した”というところから来ているらしく、「これから接客が開始されますよ」という店、客、双方にとっての合図のようなものです。
また、関西では“つきだし”とも呼ばれるように、客がその日のメニューを吟味して注文し、それが届くまでの間に口にする、最初の一品でもあります。
席料、つまり“より良いサービスを提供するために客側が一律で支払う料金”に対する“サービス”として出している、という姿勢のお店もあると思います。

店側としては、まず始めに客が口にする、しかも選んで頼んだわけでもない料理なわけですから、特に気も使うでしょう。
そして客はそこから手腕や心意気、個性、さらに季節感なんかを感じ取り、さていよいよ本格的に飲み食いを楽しむか、となっていくわけです。

とまぁ、これが理想的なお通しの形。

ではなぜ先ほどのようなニュースが出てくるかというと、1つにはこの活動をしたのが学生であることからもわかる通り、居酒屋で酒を飲むこと自体の経験が短く、そういった文化の存在自体を知らないという理由があると思います。
これは時間が解決することであって、徐々にその良さに気付いていけばいいだけのことです。
なんか偉そうですいません。

それよりも問題なのが、古くからの居酒屋文化の形式を流用し、席料を取るという名目のためだけに出される、一部の居酒屋の俗悪なお通しの存在でしょう。
あまり偏見で語りたくはないですが、やっぱりチェーン店なんかに多いような気がします。
※僕は好きなチェーン店もたくさんあります
誰しも「え?こんな適当な、クズ野菜をただ煮ただけのもので何百円も取るの?」なんて憤った経験、あるんじゃないでしょうか?

というわけで、世の中には良いお通しと悪いお通しがある。
料金表示や拒否自由の義務化なんて野暮なことはしてほしくないが、悪いお通しはこの世から滅んでほしい。
なんて当たり前の結論でもって、長い前置きを終えて本編へと移っていければと思います。


さて、最近京王井の頭線の新代田って駅に行くことが何度かあり、駅前の閑散っぷり、そしてポツポツと点在する赤提灯の灯に、なんとも言えない好感を抱いていたんですよ。
にぎやかな明大前、そして超メジャータウンである下北沢の間には、新代田と東松原というちょっと地味な2駅が存在するんですが、こういう存在感にこそグッときてしまう質なんですよね。

先日も近くに出向く用事があったので、実際このあたりで飲んでみることにしました。

僕は初めて飲みに行く街について、あまり食べログなんかのグルメ情報サイトによる下調べをしないでおくのが好きなんですが、同時に、あらかじめグーグルストリートビューでバーチャル散策をしておくことも大好きなんですよね。
心は完全に遠足の前日の小学生って感じで、当日までもう全っっっ然我慢できない。
で、良さげな面構えの大衆酒場なんかを見つけるともう、心は現地に飛んでしまうわけです。

というわけで今回もネット上でこの界隈をウロウロしていたところ、気になるお店を発見しました。
「お酒 小料理 三木松」というシンプルな看板のみが掲げられていて、シャッターは完全に閉まっている。
パッと見はすでに閉店してしまったお店のようにも見える微妙なライン。
しかしどうも気になるんでそのまま店名を検索してみたところ、いくつかの情報が発見できまして、お店はたぶんまだ営業されているような雰囲気です。
よし、ここまで気になったからには行ってみるかと、この日の目的地は東松原に決定!




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おお!ストリートビューで見た景色!



実際に歩いてみると、どこか郷愁のある、つつましやかな街の佇まいが大変心地良いです。

「三木松」さんの営業時間は一般的な居酒屋からすると少々遅めの19時かららしく、1軒目は駅前の「鶏々舎(ととや)」さんって店に入ってみました。




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鶏せんべい(300円)



ここが週末になると焼鳥が半額になったり(この日ちょうどそうだった)、タイムサービスでドリンクもすごい安かったりと、ものすごいお得感のあるいいお店。

写真の鶏せんべいは胸肉を叩いて薄ーく伸ばして揚げたもので、よくある鳥皮せんべいなんかと比べると若干ヘルシーなんだけど、パリパリと香ばしくておつまみにぴったり!
綺麗だし料理も美味しいし、ここもまた行きたい店だったなー。

しかし!今日の第一目的は三木松。
19時を回ったところで鶏々舎を後にし、商店街を南下します。




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やってる!



ストリートビューで見た昼間のひっそりとした雰囲気とは打って変わって、活気のある外観ですね。




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この○○に、それぞれが自分の名前を当てはめて良い



常連、一見、問わず快く迎えてくれようとするお店の姿勢が伺える、珍しくも心温まるメッセージですね。
絶妙な位置にある“お酒”の文字とかもたまんないっす!

入店してカウンターの隅に通して頂き、見上げると、




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この眺め



寡黙ながらも威圧感は皆無な、仕事のお好きそうな大将がカウンターの中にいらっしゃり、常連さんが数名。
ゆったりとした空気が流れる店内は、決して特別な部分はないけれども、大変贅沢な空間に感じますね。




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反対側は小上がり



とっくり狸が座敷を見守っています。


で、ここから先ほどの前置きと繋がります。
三木松のメインメニューは“おでん”なんですが、“お通し”が意外かつ大変素晴らしいんですよ!




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マグロと鯛の刺身小鉢



新鮮で絶妙に脂が乗り、口に入れるととろけるマグロは、中トロでしょうか。
しっかりとした歯応えを残しながらも旨味濃厚な鯛も心からうまい。
どんな味オンチでもモノがいいことが伝わってくる、そして気の利きすぎたお通しです。

さっそく頼んだ熱燗(お酒・大 680円)とこの1皿で、もうすでに夢心地。
このお通しがいくらかなんてどこかに表記してあるわけではないんですが、別にいいじゃないですか。
実際、お会計を聞いてびっくりするようなこともありませんでしたし。

こういう印象に残るお通しに出会い「またあのお通しを食べに行きたい!」と思わせてくれることって、いい居酒屋の条件の1つになり得るなって思いました。

ここではおでんの他、先ほどの写真の短冊にあったようなオーソドックスな居酒屋メニュー、そして季節物中心の日替りメニューが十数種あります。




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日替りホワイトボード



これまた、どれもそそる!

油断してると眺めてるだけで10分20分過ぎてしまう文字列ですが、ここから、自分が食べたことのない




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そばの芽おひたし(360円)



を注文してみました。

赤と緑の対比が目にも楽しく、三つ葉と菊の花をミックスしたような、青くてほろ苦いんだけど華やかなような、味わい深〜い1品です。
こういうものと日本酒、とってもミニマムな構成でありながら、どうしてこう幸福度が高いんでしょうか。

もちろん、おでんもいきましょう。




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どうしても好みが白モノ系に寄る



左下から時計回りで、さつまあげ(130円)とうふ(100円)しらたき(100円)ちくわぶ(130円)にんにく袋(220円)
さつまあげは同行してくれてた妻が選んだもので、僕だけだったら皿の上真っ白でしたね。

まずどれも大ぶりで、これだけ盛られるとかなりのインパクト。
その割に1つ1つがリーズナブルですねー。

関西風の透き通ったツユの旨味がそれぞれの具材にじんわりと染み渡り、あ〜、心から癒される…。

見慣れない“にんにく袋”ですが、これはきんちゃくの中にトロトロになったキャベツと、これまた柔らかく煮込まれたニンニクがゴロゴロと入っています。
パンチがありながらも優しいというなんだか矛盾したような1品ですが、僕の好みドストライクで次回も注文決定だな。

さてさて、2軒目でもありますし、おでんのボリュームもかなりのものだったので、だいぶお腹いっぱいになってきました。
けどここ、マジで居心地がいいんだよな。
もうちょっとだけ飲みたい。
順当にいけば、お酒の小(350円)だけど、なんだかやけにいい気分だし、ちょっと贅沢しちゃうか!




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獺祭 こっぷ(600円)



うめー!!!

前の店と合わせて散々飲んだあと、こんな香り高い酒で締めてしまうなんて、それこそ贅沢の極みですが、ゆっくりと味わいながら獺祭を飲むこの時間の贅沢さといったらなかったです。

で、気が大きくなって、さらに気になるおでんも追加知しちゃうというね。




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ゆり根入りがんも(280円)、きくらげ(120円)



がんもはご想像通り、旨味を吸ったフワフワ食感に百合根のアクセントが加わってこれまた幸せ。
さすがの高級品(この店では)ですな。
きくらげの方は、どうしても味わってみたくて頼んだんですが、なにしろでかい!相当なきくらげ好きの方は試してみては?というような感想を抱きました。


というわけで今回もそろそろおしまい。

“若者の酒離れ”なんて言葉をよく聞く昨今ですが、若い方こそいいお通しに出会い、お遠しとは憎むべきだけの存在ではないと知って、さらにいいお酒を飲んでもらいたいなって思います。
格好付けて言えば、居酒屋とは“心の豊かさ”を求める場所。
「お通し料金の義務化!」なんてせせこましく主張するのは、ちょっとかっこ悪いんじゃないか!と、若輩者の自分が言ってみたりね。



あ、ところで東松原の商店街にあるスーパー、そんなに大型店なわけでもないのに、




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トマトがやたらと充実してた



んですが、東松原の方々ってそんなにトマトが好きなんですか?





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告知

2014年3月21日(金・祝)
ピコカルプレゼンツ「熱気あふれる若者たちの殿堂」
高円寺 スタジオドム

開催時間 / 18:30〜23:00
当日料金 / 1,000円(飲み物持ち込み自由)
    BBQは食べ放題で1,000円
    缶べキューは時価

ピコピコでカルチャーなジャパンのWebマガジン「ピコピコカルチャージャパン」のイベントがついに開催!
ピコカルメンバーとステキなゲストでナイスなイベントになっています。

ゲスト /
 FQTQ
 HOTELスカイラブ
 ヤマサキミチオ
 イアン

DJ /
 オノセタイチロウ
 タナカマコト
 ディスク百合おん
 パリッコ
 チミドロDJ(チミドロ鈴木&花井)

Food /
 BBQ(1,000円食べ放題)
 チミドロ鈴木の缶べキュー
 ※BBQは食材および炭が無くなり次第終了します
 ※缶べキューは時価になります

物販 /
 パリッコ「大衆酒場ベスト1000(2)」、「クラブDJストーム(1)」
 タナカマコト「BOARD GAME GUIDE 500」
 ディスク百合おん「缶バッチ」

また、スタジオドムでお馴染みになっている屋上BBQも用意!
なんと1,000円で食べ放題となっています。
同時にチミドロ鈴木は伝説の缶べキューでも参戦!
また飲み物は持ち込み自由となっていますので好きなだけ飲んで貪り食って下さい!

※BBQは食材および炭が無くなり次第終了します
※缶べキューは時価になります

ピコカルプレゼンツ「熱気あふれる若者たちの殿堂」























  




posted by パリッコ at 14:09 | Comment(0) | 第101回〜第125回
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