大衆酒場ベスト1000

2014年05月03日

第104回「谷中 鳥よし(千駄木)/あんこう鍋」

あの日の想い出を甦らせてくれた絶品あんこう鍋

えっと、まず初めにお断りしておかなければいけないことがあります。

今回の記事は主に、谷中「鳥よし」さんの“あんこう鍋”をご紹介する内容なんですが、実は今年のシーズン、4月で終了してしまいました。
ですから、記事を読んで、もし「今すぐ食いにいきてーっ!」と思われても、次のシーズンがやってくる10月までは食べられないということです。
なんとも、生殺しのような記事を書いてしまいすみません…。

まぁ逆に考えると、鳥よしは、かなり前から予約を取らなければ入り辛いような、ものすごい有名店です。
でも今から虎視眈々と時期を狙い、あんこう鍋の予約が始まるや電話を入れれば、スムーズに入れるに違いありません。
そんなポジティブな考え方で、僕の浮かれっぷりにイライラすることなくお読み頂ければ幸いです。
では本文へ。


今回ご紹介するのは、谷中の鳥よし
TVや雑誌などでも紹介されることが多く、ご存知の方もたくさんいらっしゃると思います。
僕もずっと行ってみたかったんですが、なかなか予約が取りづらいという噂も聞いていたので、「選ばれしグルメ人間だけが入れる店なのかなぁ」な〜んて思って、ボーッとしてました。
なんたって、芸能界きってのグルメおじさん、あの“中尾彬”さんがお気に入りの店だっつうんですから!

ただ今年、なぜだか無性にあんこう鍋欲が高まってしまい、「もう、行ったれ!」と、3月の初めくらいに思い切って予約の電話を入れてみました。
そうしたら「4月ならまだ空いてますよ〜」とのことで、その約1ヶ月後、夢にまで見た鳥よしへ実際にお邪魔することができたのです!

お店があるのは、谷中、根津、千駄木を称して“谷根千”なんて呼ばれる、東京屈指の下町エリアのど真ん中
最寄り駅はJRの日暮里、西日暮里、それから千代田線の千駄木あたりですね。
この近辺だと、「いづみや」「鍵屋」といった渋い居酒屋をご紹介してきましたが、それらはいずれも谷根千から見ると外側。
今回はいよいよ、この連載では初めて、谷根千の内側へと進入していくことになります。

日暮里からの場合、一番有名な「谷中銀座」を抜け、こちらも定番散歩コースの「よみせ通り」から、目立たない1本の路地を入ると…




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ひっそりと身を隠すような



こんな素晴らしい店構えと出会うことができます。

建物、のれん、提灯、それからなんとも良い具合に伸びた樹木や、植木たち。
これらが相まって、思わず吸い込まれずにはいられないような絶妙の雰囲気を構築してますよね。
なんていい佇まいなんだ…。

普段は予約でいっぱいでふらりと気軽にってのはなかなか難しいようですが、タイミングが良ければ入れることもあるようですよ。
まぁ今日はバッチリ予約してありますんで、迷わず中へ。
それがすでに幸せだ!




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店内奥



はちょっと変わった作りの、一枚板のカウンターになってます。
その前がずっと小上がりの座敷。
テーブル席はありません。
心から落ち着けるサイズの、大変居心地の良い店内ですね。




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こんな感じ



さっそくエビス生(550円)を失礼してますが。

で、先ほどから何度も“あんこう鍋”と連呼してますが、ここは別にあんこう鍋屋さんではなく、美味しい魚介類が色々と揃った居酒屋さんですので、まずはなにかおつまみを頂きましょう。

ここでは頼まれる方が多いという、




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カニサラダ(600円)



前回の「百味」に続いてのカニサラダ。
カニ足の身がもう、見ての通りごっそり乗ってます!
“惜し気”ってもんがないんでしょうかね?

下のサラダはマヨベースで、家でも真似したくなるような安心感のある味付け。
これをカニの身と共にほおばる贅沢!




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黒板



にはその日のおすすめがズラッと。
大好物の




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かき(2個 550円)



は真っ先に注文しました。

はるばる長崎からやってきたのに、元気そうだなぁ〜。
プリプリしよってからに。
これにレモンを絞って、一息に口の中に滑らせると…、あとはみなさんご存知の通りの幸福感がきっちり到来しました。

ちなみに、上野の寿司幸さんで15年修行し、谷中鳥よしに戻ってこられたというこちらの三代目は、ブログも頻繁に更新されております。
ここを見れば僕ごときの説明は一切不要というか、全幅の信頼を寄せて問題のない、全体重を預けてただただフニャフニャさせて頂きたい、そんなお店の実力が伝わると思います。
本当に確かな目と技術を持っておられ、なにより魚、料理がお好きでなんでしょう。
いち客の僕は、楽しませて頂くのみですね。

ではさっきの黒板に目線を戻しまして、なにか刺身をとりたいわけですが、どれも魅力的すぎて迷ってしまいます。
そこで二代目であられる大将に「刺盛四種には何が入りますか?」とお訪ねすると、「好きなもの言ってくれれば乗せるよ!」とのこと。
うお〜嬉しい!
ありがたくお言葉に甘えさせて頂きます。




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刺身盛合わせ 四種(1,500円)



……ヤッベェ…。

まず目に飛び込んでくるのがこのマグロ。
これ、大トロも大トロ、いっちばん脂の乗った、身と皮の間のとこですよね!
こんなすごいの初めて見たっす…。
まさに「オラ、ワクワクしてきたぞ」っていう、強敵を目の前にした悟空の気分。

ちなみに手前から時計回りに、めじまぐろ(対馬)ぶり(長崎)しめさば(静岡)ホッキ貝(厚岸)
全国各地から集まってくれた新鮮きわまりない魚介類が、こうして目の前の皿に勢ぞろいしている。
こんな贅沢なことってないよなぁ、と、あらためて思わされます。

マグロは無論、甘〜い脂を口の中に充満させながら溶け出し、夢心地とはこのことか!ってお味。
大好物のブリもシメサバも一切れ一切れをじっくりと味わいたい上質な旨味と食感で、本当にたまりません。
間に挟むホッキ貝の、青さを感じさせるような清々しい味わいがまたいいんだよなぁ…。

こうなってくるともう、さっきビールの次に頼んだ




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レモンハイ(400円)



で満足してる場合じゃありません!




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竹鶴(550円)



を冷やで。
日本酒のことはいまだにあまりわかっていない僕ですが、このキレの良さが濃厚な魚介類とぴったりということだけはわかる!

さて、続けて欲望のままに食を進めると、目当てのあんこう鍋に辿り着くまでに満腹になってしまいそうなので、そろそろ鍋の準備をお願いしましょうね。


と、その前に、ここで僕とあんこう鍋の思い出をひとつ語ってもいいですか?
ダメと言われても書くので、興味ない方はどうぞ読み飛ばして下さい。

あれは大学を卒業してすぐに就職した広告代理店。
といっても、かなり下世話な業界の、かなりキナ臭い会社でした。
ただ割と羽振りのいい状況でもあって、年に一度の大きな社員旅行と、年に数度の小さな旅行が恒例行事になってたんですね。
そんな中の一度で、社長がゴルフ場の会員になっている系列のホテルだかで、福島県の小名浜に一泊旅行に行ったことがあるんです。

10年以上前のこと、酔えりゃいいやって感じで道中飲み続け、同期のやつら中心にワーワー騒ぎながらすごしたんですが、その時の夕食が異様に記憶に残ってるんですよね。
それが、あんこう鍋。

歴史のありそう〜な老舗っぽい店の巨大な広間で、社員一同がザーッと列になり、4人に1つって間隔で鍋がセットされている。
それが生まれて初めて食べた、それまで一度も興味も抱いたことのなかったあんこう鍋だったんですが、「世の中にこんなうまいものがあるのか!」と感動したのをはっきり覚えてるんです。

今必死で色んなキーワードを入れて検索してみたんですが、たぶんこの店ですね。
割烹 一平
この廊下や部屋の景色に見覚えがある!
すげーな、インターネット。

そりゃあ日本有数のあんこうの水揚げ地である福島で、こんな名門のあんこう鍋を食べたとあっちゃ、なにも理解してなかった自分の記憶にも残るのは無理ありません。

とにかくそれ以来、稀に東京の居酒屋で見つけて頼んだりしてみてたんですが、あの官能的な美味には及ばず、「あぁ、我が人生の中で、あんこう鍋はただ美化されて終わってゆくのか…」、なんとなくそう思ってたんです。
ほら、そういうのって時が経つにつれ、どんどん記憶の中で実物以上のものに成長していっちゃうじゃないですか?

ところが!今回鳥よしで食べたあんこう鍋によって、その記憶が上書きされた!
つまり、あんこう鍋が幻ではなく、具体的な美味として自分の中に登録された!
と、そういうわけなんです。

思い出話はこのへんで、本題に戻りましょう。


今回お店には、妻と2名でお邪魔しました。
一ヶ月前の予約時、人数を伝えると「じゃあ1人前でちょうどだと思います。いいですか?」と聞かれ、反対する理由もないので了承しました。

で、夢にまで見たあんこう鍋の具、1人前が、いよいよ目の前にやってきました!




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あんこう鍋(2,500円)



い…、1人前?
ものすごいインパクトです。

万が一自宅でいい材料が手に入り「あんこう鍋やるからおいでよ」なんて人を呼んだ場合、5人は呼びますね、これ。

周りを見渡すと、ここでは、2人なら1人前、4人なら2人前を頂くのが通常のようです。




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ドーン!



はち切れんばかりの身!
あと、なんか怖い部位!

そして何より、中央に位置取ったアンキモ!
この破壊力には、鍋に入れる前からクラクラさせられます。

鍋には味噌味のスープが張られ、煮立ってきたらこれらの具を全て投入!




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アンキモが相変わらず主張



それはそれは素晴らしい香りの湯気が誘惑してきます。
早く口に入れたい!




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アンキモが溶け出してきた!



そう、これこそがあんこう鍋の醍醐味。
味噌ベースのスープに溶け出したアンキモの超〜濃〜厚なコクが、他のどんなものでも代わりにはならない独自の旨味を出しまくるわけです。
も〜ヤバい。
自我が崩壊寸前です。

具材が煮えるのを歯を食いしばりながら待って、いよいよあんこう鍋タイムがスタート!




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フワッフワながらも適度な弾力あり。
上品な白身が味噌と肝の旨味をまとい、鍋の王者と言い切ってしまいたい風格を醸し出しています。




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怖かった部位



プルンプルンのコラーゲンそのもの!
変な歯触りや臭みはないけれど、あんこうらしさを感じられる、次に来た時は取り合いたい部位ですね。




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禁断の贅沢



それは、本来鍋に溶かして味わうべきアンキモをつまみ食いすること。
まったりとした旨味が「この体積の中のどこにそんなに!?」って感じで滲み出してきて、バチが当たりそう系のうまさです。


これらの旨味が染み込んだ野菜たちもまた絶品。
とにかく久々のあんこう鍋の旨味に全身打ち震えながら、貪るように食い尽くしてしまいました。




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はぁ〜、ごちそうさま



「お会計お願いします」って、馬鹿野郎!
ここからがあんこう鍋の本番だろうが!!!

…取り乱してすみません。
ここまでの行程はいわば序章(どんだけ贅沢な序章なんだって話ですが)。
この濃厚極まりない、あんこうとその他具材の旨味が詰まりに詰まった、食の至宝ともいえるスープに、アレを投入しないことには、死んでも死に切れないですよ。




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おじやセット



まー見事な炊き上がりの白米、そして見事な色ツヤの卵だこと。

これを米→卵の順に入れ、そしたら火を止め若干蒸らしたら…




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フリーザ様登場



この世で一番うめぇやつ!

僕、好きな食べ物と聞かれて“カレー”と双璧をなすのが“鍋の後のおじや”なんですよ。
まぁカレーほどのメジャー感がないので、あまり表立ってアピールすることはないんですが。
とにかく、様々な具材から出た出汁を白米という純真無垢な食材に吸わせるという、えげつないまでに貪欲な食べ物、おじや。
それをあんこう鍋で実行しちゃったってんだから、はっきり言って怪物、モンスターなわけです。

実際「うまい、うまい!」と涙目になりながら、休む暇なく食い尽くしましたよ。
そうそう、確かにあの日福島で出会ったあんこう鍋、この最後のおじやに感動し、自分の世界の小ささを思い知らされたんだったな。
これだけ想い出のハードルが上がっていたにも関わらず、今日鳥よしで食べたあんこう鍋は、それを超えて自分に感動を与えてくれた。

こんな嬉しいことってないですよね。




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竹鶴(550円)



おかわりは燗で。
随分と色味の濃い酒だったんですね。
鍋に夢中で気付かなかった。




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最後のおじや



この写真、ある意味この世で最も贅沢な一瞬を切り取った1枚だと思います。
少なくとも僕は。


というわけで、十年越しの僕のあんこう鍋への想いを、見事現実味のある出来事へと引き戻して下さった鳥よしさん。
次にあんこう鍋が食べられるのは10月〜ですが、常に季節の美味しいものを揃えていて下さるので、是非また足を運ばせてもらえたらと思います。

っていうか、今ホームページ見たら、5月〜9月は「三代目オリジナル鱧しやぶしやぶ、鱧炙り」ってあるぞ!
ヤベー!行かなきゃ!

はい、そんな感じで、また次回〜。





より大きな地図で パリッコの「大衆酒場ベスト1000」 を表示

谷中鳥よし




告知

2014年5月5日(月・祝)
第十八回文学フリマ
東京流通センター第二展示場

開催時間 / 11:00〜17:00
入場料 / 無料

ライターの大坪ケムタさんと合同で「大坪ケムタとパリッコ」として参加
ブース:Fホール・2階 エ-20



2014年5月24日(土)〜5月25日(日)
EARTH DAY CAMP Natural High! / ナチュラルハイ
山梨 道志の森キャンプ場

開催期間 / 5月24日(土)08:00〜5月25日(日)19:30
チケット料金 / こちらを参照して下さい



2014年5月30日(金)
テレポップ谷(Tele-Pop-Ya)!!(2)
四谷 アウトブレイク

開催時間 / 24:00〜05:00
当日料金 / 2,000円(1ドリンク別)

出演 /
 Raveman
 FQTQ
 パリッコ
 LOTTA(aka.その名はスペィド)
 OCCHIII























  




posted by パリッコ at 02:37 | Comment(0) | 第101回〜第125回
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